加谷珪一が考える『ポスト新産業革命』

「人口減少」×「人工知能」が変える日本──新時代の見取り図「金融機関編」

2018年03月08日(木)20時30分

定型業務が多い金融はAI時代に飲み込まれる? PhonlamaiPhoto-iStock.

個人の権利、私有の概念、社会の倫理など、18世紀の産業革命は物質的豊かさをもたらし、人間の価値観を中世以前とはまるで異なるものに変えた。

そして、本格的な「人口減少」時代を迎えた今、「AI(人工知能)」による新しい産業革命が、再び人間の価値観を根本から変えようとしている。

「人口減少」と「人工知能(AI)」後の日本をテーマにした新刊『ポスト新産業革命 「人口減少」×「AI」が変える経済と仕事の教科書』(CCCメディアハウス)を上梓する経済評論家の加谷珪一氏による特別寄稿(全4回:金融機関編/小売編/自動車産業編/不動産・住宅関連業界編)をお届けする。

新時代の見取り図「金融機関編」

メガバンクほどAI(人工知能)時代の到来を象徴している業種はない。昨年末、各行は相次いで大規模な人員削減策を打ち出したが、これだけ人手不足が騒がれている時代になぜ?と疑問に思った人も多かったはずだ。

AI時代においては、社会全体として人手不足であっても、多くの仕事で余剰人員が発生するという厳しい現実が待ち受けている。メガバンクはまさにその典型といってよい。

人員削減を表明したメガバンクは日本の近未来図

日本経済は人口減少によって空前の人手不足となっており、この傾向は当分続く可能性が高い。一方で、AI技術が急速に発達したことで、人から機械への労働シフトも進んでいる。定型業務が多い金融ビジネスは、自動化の影響をもっとも強く受ける業種のひとつである。

社会全体としては人手不足が続くものの、自動化が進む分野では逆に余剰人員が発生し、人が余る分野から、人が足りない分野へと労働者がシフトしていく。これが「人口減少」と「人工知能(AI)化」の両方が同時進行する新しい社会の姿である。

量的緩和策の影響で金利が低下し、金融機関の目先の収益が悪化していることや、人件費が経営の足かせとなっていること(銀行マンの年収はかなり下がったといわれるが、それでも一般企業と比較すると高い)、メガバンクはまだ経営体力があり、数千万円の割増退職金を出す余裕があることなど、複数の要因が重なったことで、かなり早いタイミングでの決断となった。

だがこの動きは、いずれ他業種にも波及していく可能性が高い。今、メガバンクで起こっていることは、日本の企業社会における近未来図である。金融業界の動きを知っておけば、自分が属している業界の将来についてもある程度、見通しが立てられるはずだ。

金融ビジネスのAI化は、以下の3つの段階を経て進行する可能性が高い。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米東部4州の知事、洋上風力発電事業停止の撤回求める

ワールド

24年の羽田衝突事故、運輸安全委が異例の2回目経過

ビジネス

エヌビディア、新興AI半導体が技術供与 推論分野強

ワールド

ホンジュラス大統領選、トランプ氏支持のアスフラ氏勝
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 2
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足度100%の作品も、アジア作品が大躍進
  • 3
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...どこでも魚を養殖できる岡山理科大学の好適環境水
  • 4
    素粒子では「宇宙の根源」に迫れない...理論物理学者…
  • 5
    ジョンベネ・ラムジー殺害事件に新展開 父「これま…
  • 6
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 7
    ノルウェーの海岸で金属探知機が掘り当てた、1200年…
  • 8
    ゴキブリが大量発生、カニやロブスターが減少...観測…
  • 9
    「時代劇を頼む」と言われた...岡田准一が語る、侍た…
  • 10
    「個人的な欲望」から誕生した大人気店の秘密...平野…
  • 1
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 2
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低く、健康不安もあるのに働く高齢者たち
  • 3
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開したAI生成のクリスマス広告に批判殺到
  • 4
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 5
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 6
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 7
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦…
  • 8
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 9
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 10
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 7
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 8
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 9
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 10
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story