コラム

「史上最高値」の株高を、日本は喜んでいいのか? 従来の価値観では全体像を見誤るリスクが

2025年08月29日(金)18時14分
日本の株価上昇を喜んでいいのか

VECTORFUSIONART/SHUTTERSTOCK

<8月の東京株式市場は全般的に株が買われて日経平均の史上最高値の更新が続き、メディアでは「企業が過去最高益を更新」などの景気の良い見出しが躍ったが......>

日経平均株価が史上最高値の更新を繰り返すなど株価上昇が顕著となっている。株価は景気の先行指標とされ、一般的には今後の景気拡大期待を反映すると解釈される。

だが今回の株価上昇は、当該メカニズムとは少し様子が異なっている。全世界的な物価上昇傾向に加え、日本の金融政策の影響が密接に関係しており、企業収益の増加による景気拡大より、インフレから資産を守りたいという投資家の行動が一連の結果をもたらしたと考えたほうが自然だ。


8月の東京株式市場は、お盆休みを挟んだにもかかわらず、全般的に株が買われ最高値の更新が続いた。株価が上昇しているのは、日米関税交渉が一段落し、当初、想定されていたほどの悪影響が及ばないとの見立てが広がったことに加え、円安が進んだことで企業の業績拡大期待が高まったことが要因と考えられる。

しかしながら、関税交渉の進展と円安だけでここまでの株価上昇を説明するのは難しい。背景には、国内の物価が今後もさらに上昇するというインフレ懸念が存在している。

新型コロナ危機以降、世界経済は慢性的な供給不足の状態となっており、物価が上がりやすい状況が続く。特に日本の場合、大規模緩和策を現在も継続中という状況であり、日銀は正常化の方針は示したものの、景気悪化を避けるため、利上げのペースは緩やかなものにならざるを得ない。

プロフィール

加谷珪一

経済評論家。東北大学工学部卒業後、日経BP社に記者として入社。野村證券グループの投資ファンド運用会社に転じ、企業評価や投資業務を担当する。独立後は、中央省庁や政府系金融機関などに対するコンサルティング業務に従事。現在は金融、経済、ビジネスなどの分野で執筆活動を行うほか、テレビやラジオで解説者やコメンテーターを務める。『お金持ちの教科書』(CCCメディアハウス)、『スタグフレーション』(祥伝社新書)、『本気で考えよう! 自分、家族、そして日本の将来』 (幻冬舎新書)など著書多数。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

米海兵隊、在カラチ領事館でイラン攻撃に抗議するデモ

ビジネス

アングル:ドバイなど中東ハブ空港、紛争拡大で「視界

ワールド

米CDC所長代理、はしかワクチン接種呼びかけ

ワールド

AWS、UAEとバーレーンのデータセンターが無人機
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:トランプのイラン攻撃
特集:トランプのイラン攻撃
2026年3月10日号(3/ 3発売)

核開発の断念を迫るトランプ政権が攻撃を開始。イランとアメリカの本格戦争は始まるのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「毎日が人生最後の日」だと思って酒を飲む...84歳医師が語る心優先の健康法
  • 2
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからくりとリスク
  • 3
    BTS復活...でも、韓国エンタメが「苦境」に陥っている
  • 4
    「死体を運んでる...」Google Earthで表示される「不…
  • 5
    人気の女性インフルエンサー、「直視できない」すご…
  • 6
    縫いぐるみが相棒、孤独なサル「パンチくん」がバズ…
  • 7
    ドバイの空港・ホテルに被害 イランが湾岸諸国に報…
  • 8
    【台湾侵攻は実質不可能に】中国軍粛清で習近平体制…
  • 9
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 10
    核合意寸前、米国がイラン攻撃に踏み切った理由
  • 1
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからくりとリスク
  • 2
    村瀬心椛は「トップでなければおかしい」...スノボの謎判定に「怒りの鉄拳」、木俣椋真の1980には「ぼやき」も
  • 3
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医師がすすめる意外な健康習慣
  • 4
    BTS復活...でも、韓国エンタメが「苦境」に陥っている
  • 5
    中国、4隻目の空母は原子力艦か──世界3番目の原子力…
  • 6
    「毎日が人生最後の日」だと思って酒を飲む...84歳医…
  • 7
    少女買春に加え、国家機密の横流しまで...アンドルー…
  • 8
    中国で今まで発見されたことがないような恐竜の化石…
  • 9
    「若い連中は私を知らない」...大ヒット映画音楽の作…
  • 10
    米国の中国依存が低下、台湾からの輸入が上回る
  • 1
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 2
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 3
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 4
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 5
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 6
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 7
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 8
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 9
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 10
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story