コラム

経済の「長期的な未来像」、投資家はどう見ているか...「金利」が示す世界経済のニューノーマル

2025年08月20日(水)18時37分
トランプ関税がもたらす世界経済の新常態

INNA KOT/SHUTTERSTOCK

<全世界的に金利の上昇傾向が顕著となっている背景には、将来的な新常態(ニューノーマル)の姿を模索している市場の状況がある>

大規模な金融緩和策からの撤退をようやく表明した日本のみならず、正常化にめどが付いたはずのアメリカも含め、全世界的に金利の上昇傾向が顕著となっている。新型コロナ危機以降、世界的にインフレが進んだことから、金利が上がりやすい環境になっているのは確かだが、トランプ関税によってもたらされる新常態(ニューノーマル)の姿を市場が模索している状況であり、それが金利にも反映されている可能性が高い。

日本国債10年物の金利は一時、1.6%を超え、ほぼゼロ金利に近かった2年前と比較すると、市場の景色は全く違ったものとなった。日銀はアベノミクスによる大規模緩和策からの撤退を目指しており、利上げの方向性を明確にしている。

実体経済への影響を考えると急激な金利上昇は現実的ではなく、多くの市場参加者が緩やかな金利上昇をイメージしていたが、気が付いてみれば1.5%が当たり前となっており、既に相応の金利が存在する世界にシフトしたといえるだろう。


海外に目を転じると、新型コロナ以降、顕著になったインフレは現在も継続しており、アメリカの中央銀行に相当するFRB(連邦準備理事会)は金利の据え置き、あるいは引き上げを模索している。

一方で関税による景気への悪影響を回避したいトランプ政権はFRBに対して強く利下げを求めている。トランプ関税そのものがインフレ要因であることから、金利の上昇圧力が継続すると考えるのが自然だ。

プロフィール

加谷珪一

経済評論家。東北大学工学部卒業後、日経BP社に記者として入社。野村證券グループの投資ファンド運用会社に転じ、企業評価や投資業務を担当する。独立後は、中央省庁や政府系金融機関などに対するコンサルティング業務に従事。現在は金融、経済、ビジネス、ITなどの分野で執筆活動を行う。億単位の資産を運用する個人投資家でもある。
『お金持ちの教科書』 『大金持ちの教科書』(いずれもCCCメディアハウス)、『感じる経済学』(SBクリエイティブ)など著書多数。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

EU、米工業製品への関税撤廃を提案 自動車関税引き

ワールド

トランプ氏「不満」、ロ軍によるキーウ攻撃=報道官

ワールド

トランプ氏、9月23日に国連演説

ワールド

クックFRB理事、トランプ氏を提訴 独立性と大統領
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:健康長寿の筋トレ入門
特集:健康長寿の筋トレ入門
2025年9月 2日号(8/26発売)

「何歳から始めても遅すぎることはない」――長寿時代の今こそ筋力の大切さを見直す時

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    25年以内に「がん」を上回る死因に...「スーパーバグ」とは何か? 対策のカギは「航空機のトイレ」に
  • 2
    東北で大腸がんが多いのはなぜか――秋田県で死亡率が下がった「意外な理由」
  • 3
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ女性が目にした光景が「酷すぎる」とSNS震撼、大論争に
  • 4
    トレーニング継続率は7倍に...運動を「サボりたい」…
  • 5
    「ガソリンスタンドに行列」...ウクライナの反撃が「…
  • 6
    米ロ首脳会談の後、プーチンが「尻尾を振る相手」...…
  • 7
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 8
    【クイズ】世界で1番「風力発電」能力が高い国はどこ…
  • 9
    【クイズ】1位はアメリカ...稼働中の「原子力発電所…
  • 10
    20代で「統合失調症」と診断された女性...「自分は精…
  • 1
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 2
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ女性が目にした光景が「酷すぎる」とSNS震撼、大論争に
  • 3
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット民が「塩素かぶれ」じゃないと見抜いたワケ
  • 4
    皮膚の内側に虫がいるの? 投稿された「奇妙な斑点」…
  • 5
    なぜ筋トレは「自重トレーニング」一択なのか?...筋…
  • 6
    飛行機内で隣の客が「最悪」のマナー違反、「体を密…
  • 7
    脳をハイジャックする「10の超加工食品」とは?...罪…
  • 8
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 9
    「死ぬほど怖い」「気づかず飛び込んでたら...」家の…
  • 10
    「このクマ、絶対爆笑してる」水槽の前に立つ女の子…
  • 1
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 2
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 3
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 4
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大…
  • 5
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を…
  • 6
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果…
  • 7
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 8
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 9
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅…
  • 10
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story