コラム

トランプ関税を批判しながら、「国産」にこだわる日本は矛盾している? 自由貿易が「限界を迎えた」理由

2025年05月14日(水)19時08分

自由貿易の理論的には「無意味」な輸出振興策

こうした輸出振興策は、自由貿易の理論に従えば無意味ということになるが、果たしてそうだろうか。「日の丸を世界に」という一連の政策を支持する国民は多い。

貿易赤字についても同じ傾向が見て取れる。近年、多くのITサービスが外国企業に依存するようになっており、「デジタル貿易赤字」が「問題だ」と指摘されている。「問題だ」という言葉の裏には貿易赤字は悪とのニュアンスが強くにじみ出ている。

各国は貿易を黒字にしたいという無意識的な価値観を持っており、これまで赤字を気にしていなかったアメリカもその意向を前面に押し出すようになった。双方が黒字を主張する状況で自由貿易体制を維持するのは困難である。


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プロフィール

加谷珪一

経済評論家。東北大学工学部卒業後、日経BP社に記者として入社。野村證券グループの投資ファンド運用会社に転じ、企業評価や投資業務を担当する。独立後は、中央省庁や政府系金融機関などに対するコンサルティング業務に従事。現在は金融、経済、ビジネス、ITなどの分野で執筆活動を行う。億単位の資産を運用する個人投資家でもある。
『お金持ちの教科書』 『大金持ちの教科書』(いずれもCCCメディアハウス)、『感じる経済学』(SBクリエイティブ)など著書多数。

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