コラム

トランプ関税を批判しながら、「国産」にこだわる日本は矛盾している? 自由貿易が「限界を迎えた」理由

2025年05月14日(水)19時08分

日本でも保護主義的価値観は社会に広く浸透している

自由貿易の理論に従えば、不得意なモノを生産するのは非効率なので、政策として選択すべきではない。

だが人間というのは感情を持つ厄介な動物であり、現実はそうなっていない。自由貿易体制で大きな利益を得てきた日本ですら、保護主義的価値観は社会に広く浸透している。例えば航空機や半導体の分野はその象徴と言えるだろう。

航空機産業には、航空機本体の製造と、部品・素材という2つの分野がある。日本は航空機を製造するのが不得意であり、部品や素材の製造を得意としている。逆にアメリカは航空機本体の製造が得意だ。

そうであれば、日本が航空機本体を開発・製造するのは非合理的であり、部品や素材に特化すればよいとの結論になる。高性能半導体も同様で、日本が最も不得意とする分野の1つであり、必要な製品は輸入したほうが圧倒的に効率的である。


だが日本はジェット旅客機の国産化にこだわり、国費まで投入してメーカーを支援したもののプロジェクトは失敗した。高性能半導体についても、数兆円の国費を投入して国産品を開発し、世界市場に打って出ようとしている。

プロフィール

加谷珪一

経済評論家。東北大学工学部卒業後、日経BP社に記者として入社。野村證券グループの投資ファンド運用会社に転じ、企業評価や投資業務を担当する。独立後は、中央省庁や政府系金融機関などに対するコンサルティング業務に従事。現在は金融、経済、ビジネス、ITなどの分野で執筆活動を行う。億単位の資産を運用する個人投資家でもある。
『お金持ちの教科書』 『大金持ちの教科書』(いずれもCCCメディアハウス)、『感じる経済学』(SBクリエイティブ)など著書多数。

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