コラム

気付けば社内は「専門性のないゼネラリスト」だらけ...中途半端なジョブ型雇用が「低賃金」を加速させる

2025年04月09日(水)17時38分
日本企業で増えるジョブ型雇用と転勤なし雇用

METAMORWORKS/SHUTTERSTOCK

<人手不足のなかで「転勤なし」などの好条件を提示する企業が増えている。その動き自体は評価できるが、従来の雇用形態を中途半端に残したままでは企業の生産性が下がって賃金も下がることに>

このところ、転勤なしを条件に社員を採用する企業が増えている。パーソル総合研究所の調査によると、転勤がある企業への応募を回避する人は約半数に達するという。人手不足が深刻であることから、多くのビジネスパーソンが嫌がる転勤をなくすことで、人材獲得を有利に運ぼうという算段である。

戦後日本は、無制限残業や転勤が当然視される一方、終身雇用と年功序列が約束されるという特殊な雇用形態だった。

諸外国では標準的となっている、いわゆるジョブ型(所属ではなく業務に対して賃金を払う雇用形態)の場合、その性質上、無制限の転勤はなじまない。ジョブ型の企業社会においては、転勤を伴う雇用形態というのは、幹部候補生や特別な専門職に属する人に限った話と考えてよいだろう。


日本でも転勤なしの雇用形態が普及してきたという動きは、ジョブ型雇用シフトの一形態と見なすことができるし、実際、大企業を中心に多くの企業が従来の日本型雇用を改め、諸外国と同様の雇用形態を模索しているともいわれる。

ただ日本の場合、完全にジョブ型への移行が実施できず、終身雇用や年功序列を残したまま、表面的にジョブ型に移行したり、転勤なしの制度を整えるケースが少なくない。

プロフィール

加谷珪一

経済評論家。東北大学工学部卒業後、日経BP社に記者として入社。野村證券グループの投資ファンド運用会社に転じ、企業評価や投資業務を担当する。独立後は、中央省庁や政府系金融機関などに対するコンサルティング業務に従事。現在は金融、経済、ビジネス、ITなどの分野で執筆活動を行う。億単位の資産を運用する個人投資家でもある。
『お金持ちの教科書』 『大金持ちの教科書』(いずれもCCCメディアハウス)、『感じる経済学』(SBクリエイティブ)など著書多数。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

豪11月就業者数は2.13万人減、予想外のマイナス

ワールド

米政府、ルクオイル外国資産の売却期限を来年1月17

ビジネス

米FRB、流動性管理へ短期債購入を12日開始 刺激

ビジネス

中国レアアース輸出許可、フォードのサプライヤーが取
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
2025年12月16日号(12/ 9発売)

45年前、「20世紀のアイコン」に銃弾を浴びせた男が日本人ジャーナリストに刑務所で語った動機とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア空軍の専門家。NATO軍のプロフェッショナルな対応と大違い
  • 2
    トランプの面目丸つぶれ...タイ・カンボジアで戦線拡大、そもそもの「停戦合意」の効果にも疑問符
  • 3
    「何これ」「気持ち悪い」ソファの下で繁殖する「謎の物体」の姿にSNS震撼...驚くべき「正体」とは?
  • 4
    死者は900人超、被災者は数百万人...アジア各地を襲…
  • 5
    【クイズ】アジアで唯一...「世界の観光都市ランキン…
  • 6
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 7
    「正直すぎる」「私もそうだった...」初めて牡蠣を食…
  • 8
    「安全装置は全て破壊されていた...」監視役を失った…
  • 9
    イギリスは「監視」、日本は「記録」...防犯カメラの…
  • 10
    「韓国のアマゾン」クーパン、国民の6割相当の大規模情…
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 3
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 4
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 5
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
  • 6
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...…
  • 7
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア…
  • 8
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 9
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%…
  • 10
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 9
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story