コラム

日本経済に訪れる「30年目の大転換」...課題の一方で、「景気拡大のチャンス」をもたらす今年の最大の注目点は

2024年01月11日(木)18時17分
2024年の経済予測

HALLOJULIE/SHUTTERSTOCK

<日本経済がついに迎える、30年間続いてきたデフレ経済からの転換。物価上昇が顕著となるなかで金利上昇の可能性が高まってきた>

2024年の日本経済において、金利が最大の注目点となることはほぼ間違いないだろう。年の前半には日銀がマイナス金利の解除に、後半にはゼロ金利の解除に踏み切る可能性が高い。

金利が上昇するということは、この先も継続的に物価が上がることを示唆しており、言い換えれば30年間続いてきたデフレ経済からの転換がより鮮明になる。

1990年代以降、日本経済は長期にわたって低金利が続き、特にここ10年はアベノミクスの量的緩和策によってほぼゼロ水準まで低下していた。しかしながら、原油価格の上昇などをきっかけとする全世界的なインフレを受け、日本でもとうとう物価上昇が顕著となってきた。

日本の消費者物価指数は前年同月比3%を超える月が多く、ここまで物価が上がっているなかで金利がほぼゼロというのは経済合理性に反する。日銀はアベノミクス継続を強く主張する政治的グループへの配慮もあり、ゼロ金利政策を継続していたものの、昨年後半には植田総裁が政策転換をにおわせ、とうとう市場は利上げに向けて動き始めた。

家計には明らかにマイナスだが...

本来、経済というのは一定の成長と金利が存在するのが正しい姿であり、金利上昇が見込まれるということは、日本経済もようやく正常な姿に戻ってきたと解釈できる。だが30年にわたって低金利を続けた弊害は大きく、ここからの転換には紆余曲折が予想される。最大の課題は企業や個人の金利負担と政府の財政だろう。

日本国民の多くは変動金利で住宅ローンを借りており、短期金利が上昇した場合、返済額も増える。家計には明らかにマイナスであり、企業にとっても借入コストが増加するので、これまでのようにタダ同然で資金を借りることはできなくなる。

政府にとっても同じであり、金利が上昇すれば政府の利払い負担が一気に増加する。仮に2%まで金利が上がれば、政府の利払い費はなんと20兆円もの金額になってしまう。防衛費を約5兆円から約11兆円に増額するだけでこれだけの大騒ぎになっている現実を考えると、20兆円の負担はとてつもなく大きい。

プロフィール

加谷珪一

経済評論家。東北大学工学部卒業後、日経BP社に記者として入社。野村證券グループの投資ファンド運用会社に転じ、企業評価や投資業務を担当する。独立後は、中央省庁や政府系金融機関などに対するコンサルティング業務に従事。現在は金融、経済、ビジネス、ITなどの分野で執筆活動を行う。億単位の資産を運用する個人投資家でもある。
『お金持ちの教科書』 『大金持ちの教科書』(いずれもCCCメディアハウス)、『感じる経済学』(SBクリエイティブ)など著書多数。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

米新規失業保険申請1.8万件増の24.1万件、予想

ビジネス

米財務長官、FRBに利下げ求める

ビジネス

アングル:日銀、柔軟な政策対応の局面 米関税の不確

ビジネス

米人員削減、4月は前月比62%減 新規採用は低迷=
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 2
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 3
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 4
    ポンペイ遺跡で見つかった「浴場」には、テルマエ・…
  • 5
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 6
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 7
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 8
    クルミで「大腸がんリスク」が大幅に下がる可能性...…
  • 9
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 10
    悲しみは時間薬だし、幸せは自分次第だから切り替え…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 7
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 8
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 9
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 10
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 9
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 10
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story