コラム

インバウンドに期待する日本の勘違い...「爆買い」中国人はもう帰って来ない?

2022年11月30日(水)17時50分
日本の「爆買い」観光客

AFLO

<ゼロコロナ政策が終われば再び中国人観光客が世界に飛び出すと思われるが、それが過去の「爆買い」客たちと同じと思っていては失敗する可能性が>

新型コロナウイルスの水際対策が緩和されたことから、外国人観光客によるインバウンド需要の復活が期待されている。観光局によると、2022年10月に日本を訪れた外国人観光客は49万8600人(推計)と前年同月比で22倍の増加となった。

もっとも、ピークだった19年には年間約3200万人、月当たりでは267万人が日本を訪れていたので、当時と比較するとまだまだ人数は少ない。水際対策が緩和されたにもかかわらず、ピーク時の5分の1しか来日していないのは、中国でゼロコロナ政策が続き、中国人が海外旅行に行けないからである。

外国人観光客による消費といっても、約4割は中国人によるものであり、台湾と香港を加えた中華圏の人たちの消費は全体の6割近くを占める。インバウンドの本丸は中国人なので、彼らが日本にやって来ない限り、本格的な需要拡大は見込めないだろう。

だが、中国のゼロコロナ政策もいつかは終了するはずであり、円安の進展によって海外から見た日本の割安感はかなり高まっている。中国で海外旅行が解禁となれば、これまで以上に多くの観光客が日本を訪れ、大金を落とすだろう。一方で、観光客の行動というのは時代とともに変化するものであり、コロナ収束後のインバウンド需要を確実に取り込むためには、常に変化に対応する必要がある。

「爆買い」は過去の日本人観光客の姿?

過去10年、訪日客による「爆買い」の主役が中国人であったことは言うまでもない。中国はここ10年で急速に豊かになっており、多くの中間層が誕生し、観光旅行と消費を謳歌した。だが彼らが次の10年も全く同じ消費行動を取るとは限らない。それは過去の日本人の振る舞いを見れば一目瞭然である。

1980年代、バブル経済の影響で日本社会は急激に豊かになり、多くの日本人が海外旅行に出かけるようになった。当時の日本人は、パリの凱旋門やニューヨークの自由の女神など、いわゆる典型的な観光地を強行日程で巡り、今の中国人さながらに現地の店でブランド物などを買いあさった。

一部の日本人観光客は、現地で下品な振る舞いをして顰蹙(ひんしゅく)を買ったりしていたが、急激に豊かになった人たちの振る舞いというのは、国籍を問わず、いつの時代も似たようなものである。

プロフィール

加谷珪一

経済評論家。東北大学工学部卒業後、日経BP社に記者として入社。野村證券グループの投資ファンド運用会社に転じ、企業評価や投資業務を担当する。独立後は、中央省庁や政府系金融機関などに対するコンサルティング業務に従事。現在は金融、経済、ビジネス、ITなどの分野で執筆活動を行う。億単位の資産を運用する個人投資家でもある。
『お金持ちの教科書』 『大金持ちの教科書』(いずれもCCCメディアハウス)、『感じる経済学』(SBクリエイティブ)など著書多数。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

中国、次期5カ年計画で銅・アルミナの生産能力抑制へ

ワールド

ミャンマー、総選挙第3段階は来年1月25日 国営メ

ビジネス

中国、ハードテクノロジー投資のVCファンド設立=国

ワールド

金・銀が最高値、地政学リスクや米利下げ観測で プラ
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指すのは、真田広之とは「別の道」【独占インタビュー】
  • 4
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 5
    「時代劇を頼む」と言われた...岡田准一が語る、侍た…
  • 6
    「衣装がしょぼすぎ...」ノーラン監督・最新作の予告…
  • 7
    アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年…
  • 8
    「個人的な欲望」から誕生した大人気店の秘密...平野…
  • 9
    ノルウェーの海岸で金属探知機が掘り当てた、1200年…
  • 10
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 4
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 5
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 6
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 7
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 8
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 9
    懲役10年も覚悟?「中国BL」の裏にある「検閲との戦…
  • 10
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 6
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 7
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 8
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 9
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 10
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story