第6波に備えよ、最大の景気対策は「経済再開」より「医療崩壊の防止」だ
消費者はばかではないので、常にリスクと効用をてんびんに掛けた上で判断する。ケインズ経済学では、人々は所得の一定割合を消費に回すと仮定するが、一方でケインズ自身は消費について主観的要因も大きいと指摘している。
「予期できない危急の事態」(『雇用、利子および貨幣の一般理論』)が考えられる場合、人々は「所得からの支出を手控えようと」(同書)する。もし第6波の発生が予想され、再度、医療崩壊が発生するリスクがあると国民が判断した場合、宣言が解除されても、行動を100%元の状態には戻さないだろう。
今、政府が行うべきなのは、仮に感染が再拡大した場合でも十分な医療を提供できる体制を早期に構築することであり、消費経済のメカニズムに沿えば、これこそが最大の景気対策であると筆者は考える。医療体制の整備は、施設などハードの問題ではなく、日常的に医療従事者の負荷が高いというソフトの問題が大きい(日本の医療従事者1人当たりの患者数は諸外国の3倍)。病院をまたいだスムーズな医療従事者の派遣などの仕組みがなければ、医療体制の拡充は不可能である。

アマゾンに飛びます
2023年6月13日号(6月6日発売)は「最新予測 米大統領選」特集。トランプ、デサンティス、ペンス……名乗りを上げる共和党候補。超高齢の現職バイデンは2024年に勝てるのか?
この筆者のコラム
人間の敵か味方か...グーグル検索を置き換える? 今さら聞けないChatGPTの正体 2023.06.02
「日本ネット企業の雄」だった楽天は、なぜここまで追い込まれた? 迫る「決断の日」 2023.05.30
広島マツダ「障害者への差別動画」騒動には、日本を「貧しくした元凶」が表れていた 2023.05.17
もう元には戻れない日本経済...崩壊したコロナ以前の「前提」と、来るべき未来の姿とは? 2023.05.10
架空の内容を答えることも...特に日本で、ChatGPTの「不誠実さ」に注意が必要な訳 2023.04.26