コラム

医療関係者に批判や圧力を向けても、医療崩壊の根本原因は解決しない

2021年09月08日(水)19時16分

厚生労働省によると2021年5月時点の入院患者数は約113万人だが、このうち介護との関連性が高い療養病床は全体の2割以上を占めている(日本は精神病床の多さも突出しており、こちらも2割以上を占める)。しかも全入院患者の7割以上が高齢者である。

療養病床や精神病床が多いのは、介護制度や社会におけるメンタルケア体制が不十分であることの影響が大きく、医療単体では解決できない。開業医の中には地域のワクチン接種や高齢者ケアに尽力している人もおり、開業医に協力要請する場合には、地域の実状を考慮する必要がある。

こうした状況下で入院患者の調整を行い、医療人材を最適配置するためには、明確なリーダーシップと合理的に意思決定できる専門チームが必要となる。もっとも大事なのはこの部分であり、現行法の範囲でもできることはたくさんある。医療関係者に協力を呼び掛けるのは当然だが、特定の関係者にただ圧力をかけても問題は解決しない。

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プロフィール

加谷珪一

経済評論家。東北大学工学部卒業後、日経BP社に記者として入社。野村證券グループの投資ファンド運用会社に転じ、企業評価や投資業務を担当する。独立後は、中央省庁や政府系金融機関などに対するコンサルティング業務に従事。現在は金融、経済、ビジネス、ITなどの分野で執筆活動を行う。億単位の資産を運用する個人投資家でもある。
『お金持ちの教科書』 『大金持ちの教科書』(いずれもCCCメディアハウス)、『感じる経済学』(SBクリエイティブ)など著書多数。

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