コラム

太平洋戦争の開戦に突き進んだ当時と変わらない日本「失敗の本質」

2021年08月05日(木)11時56分
東京五輪開幕式

東京五輪の開幕式 FABRIZIO BENSCHーREUTERS

<五輪開幕前、迷走に迷走を重ねた日本。その根本にある「病理」は太平洋戦争を避けられなかった当時から変わっていない>

東京五輪は、国民から100%の支持が得られないという状況下での開催となった。コロナ危機という要因があったとはいえ、ほとんどの国民が支持するはずのイベントがここまでネガティブになってしまったのは、政府の意思決定が迷走に迷走を重ねたことが大きい。

順調に物事が進んでいるときには大きな問題は発生しないが、非常時になると全く機能しなくなるという日本社会の特質を改めて露呈する形となったが、一部からは太平洋戦争との類似性を指摘する声が出ている。80年前と今を比較するのはナンセンスという意見もあるが、事態の推移を考えるとこの類似性を否定するのは難しそうだ。

今回の五輪は当初から問題が山積していた。2015年7月、新国立競技場の建設費が当初予定を大幅に上回ることが判明したが、政府がうやむやに処理しようとしたことから批判が殺到。同年9月には公式エンブレムの盗作疑惑が発覚し、当初は盗作はないと強気の対応を見せたものの、選考過程の不透明性が指摘されるなど外堀が埋められ、使用中止が決断された。

18年には日本オリンピック委員会(JOC)の竹田恒和会長が仏捜査当局から贈賄容疑で捜査され、19年には記者からの質問を一切受け付けず、何の説明もないまま退任。21年2月には森喜朗大会組織委会長が女性蔑視発言をきっかけに辞任し、後任指名された川淵三郎氏にも密室人事批判が殺到。結局、川淵氏も役職を辞退してしまった。

佐々木氏、小山田氏、小林氏......

開会式の演出では能楽師の野村萬斎氏を総合統括とするチームが解散を表明。その後、統括に起用されたクリエーティブディレクターの佐々木宏氏は、女性タレントを蔑視する演出プランがきっかけで辞任し、今度は楽曲担当で参加していた小山田圭吾氏が、障害者への虐待を自慢する発言が問題視され、やはり辞任に追い込まれた。

最後は、過去のホロコースト揶揄発言によって開会式ショーディレクターの小林賢太郎氏が解任されるというありさまである。

次から次へと目を覆いたくなる事態が発生したわけだが、これは個別問題へのずさんな対応の積み重ねが大きく影響している。最初に発生した問題に対して責任の所在をはっきりさせ、適切に処理していれば、次の問題処理の難易度は下がる。だが、最初の問題をうやむやにすれば次の問題処理はさらに難しくなる。

プロフィール

加谷珪一

経済評論家。東北大学工学部卒業後、日経BP社に記者として入社。野村證券グループの投資ファンド運用会社に転じ、企業評価や投資業務を担当する。独立後は、中央省庁や政府系金融機関などに対するコンサルティング業務に従事。現在は金融、経済、ビジネス、ITなどの分野で執筆活動を行う。億単位の資産を運用する個人投資家でもある。
『お金持ちの教科書』 『大金持ちの教科書』(いずれもCCCメディアハウス)、『感じる経済学』(SBクリエイティブ)など著書多数。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

欧州8カ国に10%追加関税、トランプ氏表明 グリー

ワールド

ベネズエラ、今月初めの米軍による攻撃で兵士47人死

ワールド

EU、重要インフラでの中国製機器の使用を禁止へ=F

ワールド

イラン抗議デモ、死者3000人超と人権団体 街中は
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:総力特集 ベネズエラ攻撃
特集:総力特集 ベネズエラ攻撃
2026年1月20日号(1/14発売)

深夜の精密攻撃でマドゥロ大統領拘束に成功したトランプ米大統領の本当の狙いは?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    韓国『日本人無料』の光と影 ── 日韓首脳が「未来志向」語る中、途方に暮れる個人旅行者たち
  • 2
    世界最大の埋蔵量でも「儲からない」? 米石油大手がベネズエラ投資に慎重な理由
  • 3
    ピラミッドよりも昔なのに...湖底で見つかった古代の船が明かす、古代の人々の「超技術」
  • 4
    【銘柄】「住友金属鉱山」の株価が急上昇...銅の高騰…
  • 5
    鉛筆やフォークを持てない、1人でトイレにも行けない…
  • 6
    上野公園「トイレ騒動」に見る、日本のトイレが「世…
  • 7
    【総選挙予測:自民は圧勝せず】立憲・公明連合は投…
  • 8
    世界初で日本独自、南鳥島沖で始まるレアアース泥試…
  • 9
    シャーロット英王女、「カリスマ的な貫禄」を見せつ…
  • 10
    DNAが「全て」ではなかった...親の「後天的な特徴」…
  • 1
    【クイズ】韓国を抜いて1位に...世界で最も「出生率が低い」のはどこ?
  • 2
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 3
    上野公園「トイレ騒動」に見る、日本のトイレが「世界一危険」な理由
  • 4
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した─…
  • 5
    世界初で日本独自、南鳥島沖で始まるレアアース泥試…
  • 6
    正気を失った?──トランプ、エプスタイン疑惑につい…
  • 7
    母親が発見した「指先の謎の痣」が、1歳児の命を救っ…
  • 8
    韓国『日本人無料』の光と影 ── 日韓首脳が「未来志向…
  • 9
    「高額すぎる...」ポケモンとレゴのコラボ商品に広が…
  • 10
    中国が投稿したアメリカをラップで風刺するAI動画を…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した─…
  • 6
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【202…
  • 7
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 8
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 9
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 10
    前進するロシア、忍び寄る限界...勝者に見えるプーチ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story