返済が一生終わらない......日本を押しつぶす住宅ローン問題の元凶は?
本来なら、都市部において低価格で良質な賃貸住宅を提供できるよう政策を転換すべきだったが、新築マンションの建設需要という目先の利益を優先し、こうした政策は後回しにされた。上限年齢を引き上げた結果、老後破産が増えれば、最終的にそのツケを払うのは国民であり、追加負担が発生するのは同じである。
一方、マンション価格の高騰を受けて、都心部に近いエリアで狭小戸建て住宅を購入する動きが活発になっている。木材は国内産も多く、木造の建設コストはあまり上昇していないので、マンションと比べるとかなりの割安感がある。
だが、狭小戸建て住宅の増加は行政側から見ると問題が多い。これまで1戸の住宅が建っていた敷地を2分割、3分割することになるので、狭いエリアに木造住宅が密集し、災害時のリスクが高くなる。権利者数が多くなるので、将来における再開発の難易度も上がるだろう。
だが良質な賃貸住宅が提供されない以上、割安な住宅を求める消費者が増えるのは確実である。場当たり的な住宅政策をやめない限り、日本の住宅問題は今後も継続する可能性が高い。
<本誌2020年10月20日号掲載>
【関連記事】3人に1人が貯蓄300万円未満 老後の経済問題は今後さらに深刻化する
【関連記事】住宅購入、人口減少時代でも「負動産」にならない物件を選ぶには?

アマゾンに飛びます
2025年8月26日号(8月19日発売)は「台湾有事 そのとき世界は、日本は」特集。中国の圧力とアメリカの「変心」に強まる台湾の危機感。東アジア最大のリスクを考える
※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら
日米関税交渉、日本は「取りあえずの勝ち」だが...待ち受ける「今後の交渉」の内容とは? 2025.08.06
軍事費5%で「経済の犠牲」は不可避...欧州が「無様な対応」を見せた理由と、中国の動向 2025.07.17
イラン攻撃が招いた「トランプ支持層」の分裂...米経済にも「意外な影響」が 2025.07.11
日鉄の「USスチール買収」は結局、成功だったのか? 完全子会社化、最終的な「勝者」は誰か 2025.07.04