コラム

関電スキャンダルの本質、「原発経済圏」の闇を暴く

2019年12月12日(木)10時19分

多額の資金を得た自治体は、一気に予算を拡大させてしまうので、原発の新規建設が続かないと予算を維持できない。ある自治体に原発ができると2号機、3号機と次々に増設が行われることにはこうした背景があり、一種の麻薬のような効果をもたらしている。

日本は全国に40基近くの原発を抱えているが、一連の金額を単純に足し合わせると総額で約7兆円が自治体に落ちる計算であり、この巨額マネーをめぐってすさまじい争奪戦が行われてきた。

先日、原子力関連施設を多数抱える茨城県東海村の山田修村長が「原発不要論者は自宅から出るな」と過激な発言を行ったことが問題視されたが、これだけの原発マネーが自治体に落ちているという現実を考えると、(原発マネーの持続を求めたと受け取られかねない)同氏の発言は、やはり不適切だったと言わざるを得ない。

政府は第5次エネルギー基本計画で原発新設を明記せず、このままでは日本の原発はあと30年で自然消滅する。再稼働するにせよ原発をなくすにせよ、エネルギー開発に伴うマネーの動きを透明化できなければ、再び同じ問題を起こしかねない。関電スキャンダルは原発マネーを透明化するきっかけとすべきだろう。

プロフィール

加谷珪一

経済評論家。東北大学工学部卒業後、日経BP社に記者として入社。野村證券グループの投資ファンド運用会社に転じ、企業評価や投資業務を担当する。独立後は、中央省庁や政府系金融機関などに対するコンサルティング業務に従事。現在は金融、経済、ビジネス、ITなどの分野で執筆活動を行う。億単位の資産を運用する個人投資家でもある。
『お金持ちの教科書』 『大金持ちの教科書』(いずれもCCCメディアハウス)、『感じる経済学』(SBクリエイティブ)など著書多数。

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