コラム

リーマンショック以降で最大の転換点を迎えた中国経済 2つの選択肢から見えるシナリオとは?

2018年10月30日(火)15時40分

今の中国経済は、バブル前の日本に近い

もっとも中国の場合、GDPを構成する支出項目の比率は米国や欧州など先進国とは大きく異なっている。中国におけるGDPの支出項目比率は設備投資に偏っており、典型的な途上国型である。

2016年のGDPのうち、個人消費が占める割合は4割程度しかない。GDPにおける最大項目は総固定資本形成となっており、公共事業や企業の設備投資など投資関連の支出が4割以上を占める。中国は輸出大国ではあるが、多額の輸入も行っているので純輸出がGDPに占める割合は2%台とそれほど高くない。

海外(特に米国)の旺盛な需要に応えるため、製造業を中心に大型の設備投資を行うとともに、各種の公共インフラ投資によって経済を成長させてきたことが分かる。

日本の場合、1970年代前半に固定資本形成が40%近くに達した時が設備投資のピークだったので、中国経済は成長期の日本よりも投資主導という側面が強い。

ただ中国はここ数年、消費主導型経済への転換を進めており、個人消費の比率が上昇する一方、固定資本形成の比率は低下が続いている。このまま中国経済の体質転換が進めば、米国や欧州ほどの水準は無理だとしても、日本並みの消費社会を実現する可能性は十分にある。

現在、中国の1人あたりGDPは約8600ドルと日本の4分の1以下である。日本の1人あたりGDPが現在の4分の1だったのは70年代なので、中国経済はバブル期前の日本に近い状況と考えてよいだろう。日本は70年代までは途上国型経済だったが、バブル経済をきっかけに内需が拡大し、現在の経済構造が出来上がった。中国も同じような成熟化プロセスを辿ると仮定すると、中国経済における個人消費の割合は今後、さらに拡大していくはずだ。

トヨタが急速に中国シフトを進めている理由

現在、中国と米国は輸入品に対して相互に高い関税を課すという、貿易戦争とも呼べる状況に突入している。中国が米国から輸入する金額分については、すでに米国が全額を関税対象としており、中国はもはやこれ以上、報復関税を課すことができない。

最終的には戦争を仕掛けているトランプ大統領次第だが、中国政府には2つの選択肢がある。ひとつは米国に対して大幅に譲歩し、米国との自由貿易を再開するというもの。もうひとつは、米国との自由貿易は諦め、内需主導の経済運営に切り替えるというものである。

習近平政権のこれまでのスタンスから考えると、安易に米国に妥協するとは考えにくく、貿易戦争が長期化する可能性はそれなりに高い。もしそうなった場合、中国政府は内需経済への転換を急ピッチで進めることになるだろう。

プロフィール

加谷珪一

経済評論家。東北大学工学部卒業後、日経BP社に記者として入社。野村證券グループの投資ファンド運用会社に転じ、企業評価や投資業務を担当する。独立後は、中央省庁や政府系金融機関などに対するコンサルティング業務に従事。現在は金融、経済、ビジネスなどの分野で執筆活動を行うほか、テレビやラジオで解説者やコメンテーターを務める。『お金持ちの教科書』(CCCメディアハウス)、『スタグフレーション』(祥伝社新書)、『本気で考えよう! 自分、家族、そして日本の将来』 (幻冬舎新書)など著書多数。

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