コラム

グリーンランドを地上げするトランプ、その真意は?

2025年04月08日(火)17時20分

グリーンランドは米大陸とロシアの中間に位置する ILLUSTRATION BY PETER HERMES FURIAN/SHUTTERSTOCK

<トランプがグリーンランド購入に本気を見せる裏には、グリーンランドの地政学的な要素がある>

グリーンランドは世界最大の「島」。島といってもその面積は217万平方キロで、オーストラリアの面積の3分の1弱に相当する。約6万人が住んで自治政府を持つが、外交は1953年までの宗主国であるデンマークが代行している。

この島は北極点に近いから、冬は暗く長く、大地は最深部で厚さ3キロに及ぶ氷雪で覆われ、時には世界最速といわれる強風(北西部の米軍基地で72年に時速333キロを観測した)に見舞われる。68年1月には米軍爆撃機が墜落したが、搭載していた核爆弾の一部は行方不明になったままだ。


この島をめぐって今、政治の暴風が吹いている。トランプ米大統領は第1期政権の時から「グリーンランドを買い上げたい」と言っていたが、3月にはバンス副大統領まで送り込んで、本気の度を強めている。

他国の土地を購入するのは私的な取引。しかし他の国の領土を政府が丸ごと買収するのは非常識。トランプは不動産業気分が抜けていないのかと思ったが、歴史上、領土の売買、やりとりは珍しくない。

アメリカも、独立時の東部13州から今の50州に広がるまでは、ルイジアナやフロリダのような他国からの購入や、カリフォルニアなどのようにメキシコとの戦争を経ての取得、ハワイのように力による併合を繰り返して巨大化してきた。デンマークが植民地化したグリーンランドにも目を付け、1860年代には購入を持ちかけている。

プロフィール

河東哲夫

(かわとう・あきお)外交アナリスト。
外交官としてロシア公使、ウズベキスタン大使などを歴任。メールマガジン『文明の万華鏡』を主宰。著書に『米・中・ロシア 虚像に怯えるな』(草思社)など。最新刊は『日本がウクライナになる日』(CCCメディアハウス)  <筆者の過去記事一覧はこちら

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

インド4月自動車販売、大手4社まだら模様 景気減速

ビジネス

三菱商事、今期26%減益見込む 市場予想下回る

ワールド

米、中国・香港からの小口輸入品免税撤廃 混乱懸念も

ワールド

アングル:米とウクライナの資源協定、収益化は10年
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 2
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 3
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 4
    日々、「幸せを実感する」生活は、実はこんなに簡単…
  • 5
    ウクライナ戦争は終わらない──ロシアを動かす「100年…
  • 6
    インドとパキスタンの戦力比と核使用の危険度
  • 7
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 8
    目を「飛ばす特技」でギネス世界記録に...ウルグアイ…
  • 9
    悲しみは時間薬だし、幸せは自分次第だから切り替え…
  • 10
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 7
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 8
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来…
  • 9
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 10
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 9
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 10
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story