コラム

毛沢東の外交は味方よりも多くの敵を生み出す「唯我独尊」だった

2021年11月30日(火)17時00分

だが、ほかならぬ習近平(シー・チンピン)は文革時代に16歳から7年間も農村に下放され毛沢東思想を徹底的にたたき込まれたため、そのあたりの機微が分からない。

これだけ中国が強くなった今は、アヘン戦争で失った国際的な威信を取り戻すとともに、浮ついた西側文化を国内から一掃する好機だと思っている。

それは中国自身にとっても非常に危険なことだ。なぜなら中国経済の足腰は実は脆弱で、外国の資本や技術が引き揚げれば経済は逆回転を始める。

加えて習政権は民営ビジネスへの規制を強めて、その活力を奪ってもいる。国王の強い力の下で政府主導の工業化を実現しようとした18世紀のフランスは、民間活力主導のイギリスに敗れたし、20世紀のソ連の計画経済は国民の消費欲を満足させられずに滅びた。そのことを習近平はどう思っているのだろう?

筆者が外交官だった頃、「毛沢東に洗脳されてマルクス主義のバーチャルな世界がリアルだと思う文革世代が中国を動かすようになる時が心配だ」と、ある中国の識者も言っていたが、今その時がやって来た。これが世界、そして日本にとって吉と出るか凶と出るか──。

中国にとっては、多分凶なのだろう。

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プロフィール

河東哲夫

(かわとう・あきお)外交アナリスト。
外交官としてロシア公使、ウズベキスタン大使などを歴任。メールマガジン『文明の万華鏡』を主宰。著書に『米・中・ロシア 虚像に怯えるな』(草思社)など。最新刊は『日本がウクライナになる日』(CCCメディアハウス)  <筆者の過去記事一覧はこちら

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