コラム

世界で変異し始めた「カネ」の行方

2021年02月10日(水)15時00分

人民元は資本取引が自由でないため、かなり異質な通貨のままでいる。そして中国は今、内需拡大で手いっぱい。田中素香・東北大学名誉教授によれば、中国の国有銀行2行による対外融資(これが「一帯一路」の主役だった)は16年の750億ドルをピークに、19年には40億ドルにまで激減している。

加えて、中国の当局はITを使い経済の再集権化・再計画化を図り始めた。民営のネット金融「アント」を締め付けているのだが、おそらく中国人民銀行(中央銀行)がデジタル元を発行してスマホの中に閉じ込めて監督する一方、どこで誰が何に使うか監督し切れない現金(紙幣)は廃止しようというのだろう。ロシアでもミシュスチン首相が、全国の売買データを一手に集中するITシステムを構築。一部食品価格を「凍結」した。

だから、カネをめぐる世界の状況はそれほど大きく変わりはしないだろう。ポル・ポトの共産主義の夢想が、結局のところ、ベトナムの軍事力という現実に負けたのに似て。

<2021年2月16日号掲載>

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プロフィール

河東哲夫

(かわとう・あきお)外交アナリスト。
外交官としてロシア公使、ウズベキスタン大使などを歴任。メールマガジン『文明の万華鏡』を主宰。著書に『米・中・ロシア 虚像に怯えるな』(草思社)など。最新刊は『日本がウクライナになる日』(CCCメディアハウス)  <筆者の過去記事一覧はこちら

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