コラム

世界が憧れた「アジアの時代」はなぜ幻に終わったのか

2019年12月17日(火)13時00分


日本はどうする? 経済面では、アジアに代わる成長エンジンを探さねばならない。これまでの成長モデルが途上国の低賃金労働でモノを組み立て、それを販売・輸出して利益を上げるという国際的な格差を利用したものであるなら、これからは自国内部の格差を成長のエンジンに転化できないか。

例えば、高所得者への課税強化や国債発行による国民金融資産からの借り上げで、低所得層に国内の余剰資金を分配、需要を喚起することで成長の好循環に結び付けるのは、どうだろう。国際政治の面で、日本はアジアでは珍しい民主政治を守ることを主眼にバランス外交を展開することになるだろう。

近世西欧に発するヒューマニズム=人間中心主義、そしてそれに基づく民主主義は、アジアでは一般的だった地主-小作の関係が薄かった日本にとって押し付けられたものではない、自分本来のものなのだから。


<本誌2019年12月24日号掲載>

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プロフィール

河東哲夫

(かわとう・あきお)外交アナリスト。
外交官としてロシア公使、ウズベキスタン大使などを歴任。メールマガジン『文明の万華鏡』を主宰。著書に『米・中・ロシア 虚像に怯えるな』(草思社)など。最新刊は『日本がウクライナになる日』(CCCメディアハウス)  <筆者の過去記事一覧はこちら

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