コラム

安定の安倍政権が「最終章」で求められる必達事項は

2019年11月06日(水)11時00分

一方で若い世代の活力を開放すべきだ。学生が就活のために海外留学もしたがらない社会の仕組みや慣行を、経団連らと共に変えねばならない。今後は大企業を中心とした日本経済や就職の在り方も変わってくるだろう。4月の一斉就職など、これまでの慣例全てをやめることは困難だ。ただ、大学や海外で習得した能力を重視しながら「期間外」の採用方法も拡大してほしい。そうしなければ、若者には勉学意欲も留学する気概も湧かない。若い世代に負担が偏る年金制度の改革も必要だ。

「ポスト安倍」という最重要問題

最後に、ポスト安倍をどうするか。これこそ目下最大の問題だ。自民党内の論理ではなく日本全体のために何が必要かという見地から考えてほしい。与野党とも社会から広く支持を受けることができ、かつ識見も政治力もある人材はほとんどいない。政党も政治も空洞化している。ポスト安倍を自民党内のたらい回しでできると思ったら有権者から痛いしっぺ返しを食らうだろう。

安倍首相は7年もの安定と活発な外交を実現してくれた。背景にはアメリカが利上げの時期であったために長期の円安が可能だった幸運もある。今後それは逆転し、人材不足も相まってポスト安倍政権は不安定化するだろう。その中でも色あせないような将来へのビジョンを、政府内外の知恵を結集して示し、大団円にしてほしい。

プロフィール

河東哲夫

(かわとう・あきお)外交アナリスト。
外交官としてロシア公使、ウズベキスタン大使などを歴任。メールマガジン『文明の万華鏡』を主宰。著書に『米・中・ロシア 虚像に怯えるな』(草思社)など。最新刊は『日本がウクライナになる日』(CCCメディアハウス)  <筆者の過去記事一覧はこちら

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