コラム

中国マネーを前に色あせる日本外交、プーチンも金正恩もなびかず

2018年07月07日(土)14時00分

そして、これまでのように相手国から具体的案件の要請が来るのを待つばかりではなく、日本側から具体的案件を融資付きで提示する。例えば、工場の建設に完成後の運営請負をパッケージで提示してはどうだろうか。

日本にカネの余裕がないとは言わせない。ODA予算は一般会計では年間約5500億円。さらに円借款はそれとは別枠で、返済金の再貸し出しと金融市場から調達した財政投融資で賄っている。これらを「日本イニシアチブ」に充当すれば、公共事業予算約6兆円の6分の1以下で「日本の顔」を世界に売ることができる。出資先に日本製品の購入といった条件を付けておけば、輸出増大にも使える。

中国のカネの力が増し、何でもありの大競争時代となった今、ODAの枠内でせせこましく考える必要もない。日本の「外交の武器」に根本的な見直しが必要だ。

<本誌2018年7月10日号掲載>

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プロフィール

河東哲夫

(かわとう・あきお)外交アナリスト。
外交官としてロシア公使、ウズベキスタン大使などを歴任。メールマガジン『文明の万華鏡』を主宰。著書に『米・中・ロシア 虚像に怯えるな』(草思社)など。最新刊は『日本がウクライナになる日』(CCCメディアハウス)  <筆者の過去記事一覧はこちら

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