コラム

イスラム国は「アラブの春」の続きである【アラブの春5周年(下)】

2016年02月17日(水)16時20分

民主化による若者たちの要求とイスラムの実現

 中東の混乱を終わらせるためには、軍とミリタリズムの暴走を止めて、文民主体の民主化を進めるしかない。そのためには、強権支配や格差の拡大、腐敗などに抗議して革命を求めた若者たちが、平和的に政治に参加して、民主的なプロセスで役割を担うよう促す必要がある。さらに国民の支持と理解を得るためには、強権に代わって秩序や治安を担うイスラムの役割は重要で、政治の分野では、武装闘争やテロを手段とするイスラム過激派ではなく、選挙参加でイスラムを実現するイスラム穏健派の役割は重要である。

「アラブの春」の際にチュニジアとエジプトで、平和的なデモによって強権体制が倒れた時、アルカイダなど武装闘争を続けてきたイスラム過激派の影響力は低下すると言われた。しかし、実際には政治を担った若者やイスラム穏健派が民主化プロセスに失敗したために、軍や過激派が息を吹き返し、混乱に拍車をかけている。

 若者たちとイスラム穏健派がこれまでの失敗の教訓を学んで、改めて民主化プロセスを担えるように、欧米や日本が働きかける必要がある。「アラブの春」後の混乱が民主化によって引き起こされたかのようなとらえ方があるのは事実誤認であり、民主化の失敗によって引き起こされたものである。混乱を収拾するには、民主的プロセスによって、若者たちの要求と、イスラムの実施という2つの要素が噛み合う政治を実現する必要がある。

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『中東の現場を歩く――激動20年の取材のディテール』
 川上泰徳 著
 合同出版

プロフィール

川上泰徳

中東ジャーナリスト。フリーランスとして中東を拠点に活動。1956年生まれ。元朝日新聞記者。大阪外国語大学アラビア語科卒。特派員としてカイロ、エルサレム、バグダッドに駐在。中東報道でボーン・上田記念国際記者賞受賞。著書に『中東の現場を歩く』(合同出版)、『イラク零年』(朝日新聞)、『イスラムを生きる人びと』(岩波書店)、共著『ジャーナリストはなぜ「戦場」へ行くのか』(集英社新書)、『「イスラム国」はテロの元凶ではない』(集英社新書)。最新刊は『シャティーラの記憶――パレスチナ難民キャンプの70年』
ツイッターは @kawakami_yasu

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