コラム

政治工作、ビジネス、資金集め...「統一教会」問題を、歴史と国際情勢から紐解く

2022年08月03日(水)17時33分

他方、日本での活動は信者獲得と資金集めが中心であり、それ故の大きな反発がもたらされた。同教会が日本で勢力を急拡大させたのは80年代以降で、88年から97年の間には4回にわたり、主として韓国側が男性、日本側が女性をパートナーとする1万1000組もの合同結婚式を挙行、多くの日本人女性が韓国に渡っている。

その後、教会の規模は宗教団体としても企業グループとしても大きく縮小したが、ある研究は今でも7000人程度の日本人女性が韓国に居住し続けていると推計している。韓国統計庁のデータによれば、日本国籍保有者の韓国居住者数は2020年現在で約2万人、国際結婚移住者は1万2000人弱だから、この数字がいかに大きいかが分かる。

こうしてみると、統一教会が冷戦下に存在した韓国の軍事政権の「負の遺産」であることが分かる。しかし、おのおのの国内での活動内容の違いもあり、安倍元首相の暗殺以後の日本の状況は、韓国において実感をもって受け入れられていない。日韓両国、そしてアメリカはこの宗教団体をめぐる状況にどう対処すべきなのか。国際的な議論が必要な状況になっている。

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プロフィール

木村幹

1966年大阪府生まれ。神戸大学大学院国際協力研究科教授。また、NPO法人汎太平洋フォーラム理事長。専門は比較政治学、朝鮮半島地域研究。最新刊に『韓国愛憎-激変する隣国と私の30年』。他に『歴史認識はどう語られてきたか』、『平成時代の日韓関係』(共著)、『日韓歴史認識問題とは何か』(読売・吉野作造賞)、『韓国における「権威主義的」体制の成立』(サントリー学芸賞)、『朝鮮/韓国ナショナリズムと「小国」意識』(アジア・太平洋賞)、『高宗・閔妃』など。


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