コラム

貧しい人ほど「割増金」を払い、中・上流は「無料特典」を享受する

2019年06月07日(金)16時40分

よく指摘されることだが、こうして彼らが長生きすることで富裕層は年金を長く受け取り、医療保険制度を長く利用し、(60代以上が対象の)無料バス乗車券を長く便利に使い続け、光熱費補助金(これも60代以上)を長く受けられることになる(どれ1つとして、要件を満たすかどうかの資力調査など行われない)。だから富裕層は、現役時代に貧困層より多くの税金を納めるけれど、引退後には貧困層よりたくさん回収しているのだ。

僕はそんなに頻繁にウェイトローズに行くことはないが、幸いにもメンバーズカードを登録していた。登録者は、スーパーで何であれ買い物をしたときにはいつでも無料で紅茶かコーヒーを提供される。10ポンド以上の買い物をすれば、無料の新聞ももらえる。だから今日は、ワインのボトルを2本買った時に無料のコーヒー(通常2ポンド)とタイムズ紙(通常1.8ポンド)まで手に入れた。そして僕は、併設されたテーブルでコーヒーを飲み、新聞を読んだ。

中流層の多くの人々と同様、僕も買い物でクレジットカードを使う。それはつまり、支払い日まで最大6週間が設けられているということだ(金利はゼロ)。僕のクレジットカードはさまざまな小売り業者と提携した期間限定サービスなどを提供していて、偶然今月は、ウェイトローズでの買い物5%オフがついていた。そんなものは「はした金」に思えるかもしれないが、イギリス生活のさまざまな場面でこうしたパターンが繰り返されているから、積み上がればけっこうな額になる。

腰かけてコーヒーを飲みながら僕は、貧困層が手に入れることもできず、必要とあればカネを出して買うことしかできないような、「無料サービス」から自分がどれだけの恩恵を受けているかを思い知らされた。特に、美しいエリアに住み、僕にしばらく家を貸してくれるのに見返りはネコの世話とワイン2本のお礼で済むような、裕福な友達がいる場合はなおさらだ。

【お知らせ】ニューズウィーク日本版メルマガのご登録を!
気になる北朝鮮問題の動向から英国ロイヤルファミリーの話題まで、世界の動きを
ウイークデーの朝にお届けします。
ご登録(無料)はこちらから=>>

プロフィール

コリン・ジョイス

フリージャーナリスト。1970年、イギリス生まれ。92年に来日し、神戸と東京で暮らす。ニューズウィーク日本版記者、英デイリー・テレグラフ紙東京支局長を経て、フリーに。日本、ニューヨークでの滞在を経て2010年、16年ぶりに故郷イングランドに帰国。フリーランスのジャーナリストとしてイングランドのエセックスを拠点に活動する。ビールとサッカーをこよなく愛す。著書に『「ニッポン社会」入門――英国人記者の抱腹レポート』(NHK生活人新書)、『新「ニッポン社会」入門--英国人、日本で再び発見する』(三賢社)、『マインド・ザ・ギャップ! 日本とイギリスの〈すきま〉』(NHK出版新書)、『なぜオックスフォードが世界一の大学なのか』(三賢社)など。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

ECB金利据え置き、6会合連続 中東情勢で「見通し

ワールド

日米首脳会談、高市氏「提案持ってきた」 中東情勢が

ワールド

日米首脳会談、高市氏「提案持ってきた」 中東情勢が

ビジネス

ECB、原油高リスクシナリオ下で27年インフレ率4
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:イラン革命防衛隊
特集:イラン革命防衛隊
2026年3月24日号(3/17発売)

イスラム神権国家を裏からコントロールする謎の軍隊の歴史と知られざる実力

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え時の装いが話題――「ファッション外交」に注目
  • 2
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期スペイン女王は空軍で訓練中、問われる「軍を知る君主」
  • 3
    韓国製ミサイル天弓-II、イラン戦争で96%迎撃の衝撃 ──「成功」が招く自国防衛の弱体化
  • 4
    第6回大会を終えて曲がり角に来たWBC
  • 5
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が…
  • 6
    原油高騰よりも米国経済・米株市場の行方を左右する…
  • 7
    【衛星画像】イラン情勢緊迫、米強襲揚陸艦「トリポ…
  • 8
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する…
  • 9
    トランプ暴走の余波で加熱するW杯「ボイコット論」..…
  • 10
    アメリカはまた「壊した後」を考えていない...イラク…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期スペイン女王は空軍で訓練中、問われる「軍を知る君主」
  • 3
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が発生し既に死者も、感染源は「ナイトクラブ」
  • 4
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製…
  • 5
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え…
  • 6
    第6回大会を終えて曲がり角に来たWBC
  • 7
    【衛星画像】イラン情勢緊迫、米強襲揚陸艦「トリポ…
  • 8
    ズボンを穿き忘れてる! 米セレブ、下を穿かず「目の…
  • 9
    住宅建設予定地に眠っていた「大量の埋蔵金」...現在…
  • 10
    「ネタニヤフの指が6本」はなぜ死亡説につながったの…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 3
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 4
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 5
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期ス…
  • 6
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 7
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 8
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 9
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が…
  • 10
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story