コラム

前回に続いて為替操作に関して「監視リスト」入りを果たした日本

2016年10月17日(月)16時15分

Toru Hanai-REUTERS

<半年ごとに出される米財務省の為替報告書で、再び日本は「監視リスト」入り。円高が進んでいることは問題視されておらず、為替介入へのハードルは高い>(写真:米大統領選の動向を注視する東京の外為市場)

 半年に一度の米財務省の為替報告書、最新号が10月14日(現地時間)と公表となりました。

 1年半前の2015年4月の公表の際には、中長期のドル円為替レートについて1ドル102円が適当との指摘がありましたので、その旨を2015年5月に寄稿し、駄目押しのつもりで120円台はドルの売り時では?と2015年6月に寄稿しましたが、今年に入ってから、「あれで随分助かった」と実務家の皆さまを中心に直接間接的に御礼を頂戴することがままありました(お役に立てたのであれば何よりですが、御礼ならワタクシではなく客観的検証を元にした明解な分析をコンスタントに公表する米財務省へお伝えいただくのが筋かと思います)。最新の内容についても心待ちに下さっている読者がおられるようなので、取り急ぎざっとではありますが、見ておきたいと思います。

 前回2016年4月から報告書の表紙も内容も一新したことはお伝えした通りです。客観性・公正性をより重視し、新たに貿易収支・経常収支・為替介入という3項目での基準枠を設定。3項目ともオーバーすれば3ストライクでアウト(「為替操作国」に認定、制裁措置等の対象へ)。前回は中国、日本、韓国、台湾、ドイツの5か国は2ストライク(「監視リスト」入り、さしずめ黄色信号が点滅している状態とも言えましょう)でした。今回は新たに加わったスイスの他、以前と同じメンバー(中国、韓国、台湾、ドイツ)とともに日本も引き続き「監視リスト」入りを果たしています。

 なお、短期的要因を排除するため、一度「監視リスト」に入ると2半期連続して枠内に収まっているのが確認できるまで留まることになります。中国は今回3項目のうち貿易収支1項目だけのオーバーですが二期連続してとのルールに基づき引き続き、日本は前回と同様に貿易収支と経常収支の2項目でオーバーしているためであり、同じ「監視リスト」入りでも状況が違うことが最初の概略部分で触れられています。

プロフィール

岩本沙弓

経済評論家。大阪経済大学経営学部客員教授。 為替・国際金融関連の執筆・講演活動の他、国内外の金融機関勤務の経験を生かし、参議院、学術講演会、政党関連の勉強会、新聞社主催の講演会等にて、国際金融市場における日本の立場を中心に解説。 主な著作に『新・マネー敗戦』(文春新書)他。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

中国、ガリウムやゲルマニウムの対米輸出禁止措置を停

ワールド

米主要空港で数千便が遅延、欠航増加 政府閉鎖の影響

ビジネス

中国10月PPI下落縮小、CPI上昇に転換 デフレ

ワールド

南アG20サミット、「米政府関係者出席せず」 トラ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 2
    「座席に体が収まらない...」飛行機で嘆く「身長216cmの男性」、前の席の女性が取った「まさかの行動」に称賛の声
  • 3
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評家たちのレビューは「一方に傾いている」
  • 4
    筋肉を鍛えるのは「食事法」ではなく「規則」だった.…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    ドジャースの「救世主」となったロハスの「渾身の一…
  • 7
    「路上でセクハラ」...メキシコ・シェインバウム大統…
  • 8
    レイ・ダリオが語る「米国経済の危険な構造」:生産…
  • 9
    「非人間的な人形」...数十回の整形手術を公表し、「…
  • 10
    クマと遭遇したら何をすべきか――北海道80年の記録が…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った…
  • 5
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 6
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評…
  • 7
    「座席に体が収まらない...」飛行機で嘆く「身長216c…
  • 8
    「遺体は原型をとどめていなかった」 韓国に憧れた2…
  • 9
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 10
    「路上でセクハラ」...メキシコ・シェインバウム大統…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 8
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 9
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 10
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story