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ロシア、アゼルバイジャン、アルメニアが入り乱れるネット世論操作激戦地帯
ネット世論操作中進国アゼルバイジャン
オクスフォード大学のComputational Propagandaプロジェクトの年刊では、国のネット世論操作(Computational Propaganda)の能力を高水準、中水準、低水準、最小の4つに区分しており、アゼルバイジャンは中水準、アルメニアは最小に分類されている。中水準とはいっても、高水準の国はわずか12カ国しかなく、最低限と低水準は32カ国もあるので全体の中では高い部類と言える。
アゼルバイジャンは国内および国外に対してネット世論操作を行う能力を有している。以前にもご紹介したように、ネット世論操作では国内世論を掌握できる体制を作ることが重要となる。
前掲「The Global Disinformation Order」のアゼルバイジャンのケーススタディによれば、2005年に「IRELI Youth」(別称:Youth Union)がアゼルバイジャン政府の情報戦に協力する目的で設立され、ナゴルノカラバフ地区など歴史問題に焦点を当てたウェブのサイトやブログを開設し、SNSで政府批判する相手を攻撃するなどの活動を行った。
2018年2月の大統領選挙ではトロールが投入され、対立候補への攻撃や対立候補のフェイスブックページを規約違反でフェイスブックに申し立てた。また、反体制派の活動家やジャーナリストを監視、攻撃していた。
アゼルバイジャンでは反対派や活動家のSNSアカウントをハッキングも行われており、反対派のサイトへのDDoS攻撃も行っている。ナゴルノカラバフ地区に関する陰謀論(主としてアルメニアを責める内容)の流布も盛んだ。
Freedom Houseの「FREEDOM ON THE NET 2020」(2020年10月)には、アゼルバイジャンにおいて政府がさまざまな方法で言論統制を行っている様子が報告されている。前述した内容にくわえて法律上の「禁止情報」の範囲を拡大し、政府批判者を容易に起訴、投獄することが可能とした。さらにコロナ・パンデミック以降は政府以外のコロナ情報を公開することに圧力がかけられた。
海外からの資金提供を受けたメディアや市民団体に解散を命じる法律も作られたため、多くのメディアや市民団体は窮乏し存亡の危機に直面している。批判者に対するネット上での攻撃、サイトアクセスのシャットダウン、逮捕などが続いたため、ジャーナリストや市民団体は発言を自粛するようになった。また、一般市民もネット上での発言に気をつけるようになったという。
国内にはロシアとイスラエルの監視システムと世界的スパイウェアを配備
アゼルバイジャンでは市民に対する監視活動も行われている。前掲の「FREEDOM ON THE NET 2020」によると、同国はロシアの監視システムSORMを導入している。SORMは旧ソ連邦を中心に導入されている通信傍受システムである。また通信事業者AzerTelecomが顔認証システムを導入していることも暴露されている。
2018年10月にはイスラエルのVerint Systems社のSNS監視システムが導入されていたことが暴露された。このシステムはアゼルバイジャン国内の特定の性的嗜好を持つSNS利用者を探すために使われ、その後、LGBT+の人々の逮捕が行われた。
イタリアの世界的サイバー軍需企業Hacking Teamから市民監視用のスパイウェアを購入していたこともわかっている。このスパイウェアは感染したスマホに保存されている情報を盗むことができ、さらにマイクやカメラを利用することも可能になる。
ただし、アゼルバイジャンにおいてこれらは違法ではない。同国の捜査活動に関する法律は広く解釈できるようになっており、法執行機関は令状なしにこうした監視活動を行うことができる。
アゼルバイジャンは特別ではない
今回の紛争の裏ではネット世論操作が繰り広げられていた。しかしアゼルバイジャンが特別というわけではない。世界の選挙や紛争、戦争はあらゆるものを兵器化するハイブリッド戦あるいは 「超限戦」へと進化しており、ネット世論操作はその中で重要な役割を果たしている。アゼルバイジャンは普通なのである。
当然、日本だけが例外ということは考えにくいが、日本国内に関してはあまりネット世論操作に関する情報がきわめて少ない。
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