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情報BOX:トランプ米政権がベネズエラ大統領を拘束、その正当性は

2026年01月05日(月)14時30分

写真はベネズエラと米国の国旗を振る人。2026年1月3日、アルゼンチン・ブエノスアイレスで撮影。REUTERS/Mariana Nedelcu

Tom ‍Hals Andrew Goudsward

[ワシントン 3日 ロイター] - 米国は3日、軍事作戦でベネズエ‌ラのマドゥロ大統領を拘束した。トランプ政権が数カ月にわたって続けてきた圧力作戦の最終局面となる動きであり、国際社会の一部の指導者からは非難の声も上がった。

米当局者によると、マドゥロ氏は刑事訴追を受けるため軍艦でニューヨークに移送されたと‌いう。

米国の軍事行動の正当性についてまとめた​。

<何が起きたのか>

米国は3日にベネズエラを攻撃し、同国の「非合法な指導者」と見なしているマドゥロ大統領と妻のシリア・フローレス氏を拘束したと明らかにした。

トランプ氏はこれまで、マドゥロ氏に政権を譲るよう迫ってきた。米政府がテロ組織に指定した麻薬カルテルを支援していると非難し、数千人の米国民の違法薬物使用による死亡に関与していると主張した。

9月以降、米軍はカリブ海と太平洋でベネズエラからの麻薬密売船とされる船艇を少‌なくとも30回攻撃し、100人以上を殺害。こうした行為は米国法にも国際法にも違反している可能性が高いと法律の専門家は指摘している。

<米国側の主張>

米当局によると米司法省は、マドゥロ氏の身柄を拘束するため、軍の支援を要請した。マドゥロ氏はニューヨークの連邦大陪審により、テロや麻薬、武器に関連する罪で、妻と息子、2人の政治指導者、国際的なギャング組織の指導者とされる人物とともに起訴されている。

ボンディ司法長官はソーシャルメディアに「(マドゥロ夫妻らは)近く、米国の法廷で、米国の正義の怒りに直面することになる」と投稿した。

トランプ氏は会見でベネズエラが米国の石油権益を盗んだと主張し、米国はそうした権利を取り戻すほか、当面はベネズエラを「運営する」と述べた。ただ、運営に関する具体的な内容には触れていない。

国際法の専門家らは、トランプ政権が作戦について、標的を絞った法執行任務であると同時に、米国によるベネズエ​ラの長期的支配の前兆にもなり得ると主張したことで、法的争点に混乱をもたらしていると指摘する。

「法執行活⁠動だったと言いながら、その後一転してベネズエラを支配する必要がある、などと言うことはできない」とノースイースタン大学で憲法を専‍門とするジェレミー・ポール教授は言う。「全く筋が通らない」

<法律はどう定めているのか>

米議会には宣戦布告の権限がある一方、大統領は軍の最高司令官であり、歴代政権は党派を問わず、軍事行動が「限定的」で「国益にかなう」と説明できる場合には実施を正当化してきた。

ワイルズ大統領首席補佐官は昨年末に掲載された米誌バニティ・フェアのインタビューで、トランプ氏がベネズエラで「陸上での何らかの活動」を許可する場合には議会の承認が必要だと語った。

ルビオ国務長官は、3日の作戦‍前に議会への通告はなかったとした。

国際法では、国連安全保障理事会による承認や自衛のためといった限られた例外を除き‍、国際関係‌における武力行使を禁じている。

法律専門家によると、麻薬密売やギャングの暴力は犯罪行為とみなされ、軍事‍的対応を正当化する「武力紛争」という国際的に受け入れられた基準は満たしていないという。

「刑事訴追だけでは、外国政府を打倒するために軍事力を行使する権限を与える理由にはならない。政権はおそらくこれも、自衛の理論に頼ることになるだろう」と、国家安全保障法を専門とするコロンビア大学のマシュー・ワックスマン法学教授は言う。

米国はベネズエラの選挙が不正に操作されていると主張した2019年以来、マドゥロ氏をベネズエラの正当な指導者として認めていない。

<前例は>

米国はリビアを含む諸外国で犯罪⁠容疑者を拘束した前例があるが、その際は現地当局の同意を求めている。また、米政権はマドゥロ氏を「非合法な指導者」と非難する一方、同氏の拘束を承認可能な他の指導者を認めていない。

89年、米国は当時パナマで軍事独裁政権を率いたノリエガ⁠元将軍を同様の状況で逮捕した。ノリエガ氏は麻薬関連の罪で起訴されており‍、米国はパナマ軍が米兵を殺害したことを受け、米国民を守るために行動したとしている。

米国はノリエガ将軍が「非合法な指導者」であると非難し、直近の選挙でノリエガ氏が「自身が破った」と主張していた別の候補者を同国の指導者として承認していた。

ホンジュラスのフアン・オルランド・エルナンデ​ス前大統領は22年に米国で麻薬密売などに関する罪で有罪判決を受け、禁固45年の刑に服していたが、先月、トランプ氏の恩赦を受けて釈放された。

法律専門家らは、米国の行動が仮に違法だったとしても、国際法には実効的な執行手段が乏しいため、米国が意味のある形で責任を問われる可能性は低いと懐疑的な見方を示している。

「いかなる法的機関も、政権に現実的な処分を課すことができるとは考えにくい」とノースイースタン大学のポール教授は述べた。

ロイター
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