ニュース速報
ワールド

アサド政権時代、集団墓地から秘密裏に遺体移送 犯罪隠す狙い

2025年10月15日(水)12時38分

崩壊したシリアのアサド政権が2019年から21年にかけて、同国最大級の集団墓地から遺体数千体を砂漠の中に移送する秘密作戦を実施していたことが、ロイターの調査で明らかになった。資料写真、ドゥマイール郊外の集団墓地、2月撮影(2025年 ロイター/Khalil Ashawi)

[ドゥマイール(シリア) 14日 ロイター] - 崩壊したシリアのアサド政権が2019年から21年にかけて、同国最大級の集団墓地から遺体数千体を砂漠の中に移送する秘密作戦を実施していたことが、ロイターの調査で明らかになった。

関係者によると、この作戦は首都ダマスカス近郊、クタイファの集団墓地を掘り返し、数10キロ離れたドゥマイール郊外の砂漠に巨大な集団墓地を建設するもので、アサド政権の犯罪を隠蔽し、イメージ回復を図るのが目的だった。

ロイターは、ドゥマイールの墓地の位置を特定して作戦の詳細を明らかにするため、遺体移動作戦に直接関与した13人の関係者に取材するとともに、関係者が作成した文書を精査し、数年にわたり撮影された両墓地の衛星画像を数百枚分析した。

ロイターは14日、シャラア大統領率いるシリア暫定政権に本調査の結果を伝えた。政権は調査に関する質問に即座には回答しなかった。

ロイターは、侵入者が墓を改竄(かいそ)するリスクを減らすため、本記に墓地の正確な位置を記していない。

調査によると、この墓地は少なくとも34の壕で構成され、全長2キロ。目撃者の証言と墓地の規模を踏まえると、数万人が埋葬されている可能性がある。

アサド政権は内戦初期の2012年ごろ、クタイファで遺体の埋葬を開始した。目撃者によれば、この集団墓地には刑務所や軍病院で死亡した兵士や囚人の遺体が埋葬されていた。

作業に関わった人々によると、2019年2月から21年4月にかけて、ほぼ毎週4晩にわたり、土と人骨を積んだ6―8台のトラックがクタイファからドゥマイールの墓地へ向かった。ロイターは、他の場所からの遺体もこの場所に運ばれたかどうかを確認できなかった。

作業に直接関与した全員が、強烈な悪臭を鮮明に記憶していた。

2人のトラック運転手と元将校はロイターに対し、クタイファの集団墓地を空にし、大量殺戮の証拠を隠すのが遺体移送の目的だと軍司令官らから告げられたと述べた。

ロイター
Copyright (C) 2025 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

独経済界、対アフリカ政策の転換を提言 資源確保で戦

ビジネス

蘭ASML、第3四半期受注額は予想上回る 来年は中

ビジネス

楽天G、カード事業の米上場を検討 PayPayの動

ビジネス

韓国造船業、中国の制裁でも直接の影響ない=アナリス
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:日本人と参政党
特集:日本人と参政党
2025年10月21日号(10/15発売)

怒れる日本が生んだ「日本人ファースト」と参政党現象。その源泉にルポと神谷代表インタビューで迫る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    フィリピンで相次ぐ大地震...日本ではあまり報道されない、被害の状況と実態
  • 2
    まるで『トップガン』...わずか10mの至近戦、東シナ海で「中国J-16」 vs 「ステルス機」
  • 3
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以外の「2つの隠れた要因」が代謝を狂わせていた
  • 4
    「心の知能指数(EQ)」とは何か...「EQが高い人」に…
  • 5
    「欧州最大の企業」がデンマークで生まれたワケ...奇…
  • 6
    【クイズ】アメリカで最も「死亡者」が多く、「給与…
  • 7
    イーロン・マスク、新構想「Macrohard」でマイクロソ…
  • 8
    「中国に待ち伏せされた!」レアアース規制にトラン…
  • 9
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 10
    「中国のビットコイン女王」が英国で有罪...押収され…
  • 1
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 2
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな飼い主との「イケイケなダンス」姿に涙と感動の声
  • 3
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以外の「2つの隠れた要因」が代謝を狂わせていた
  • 4
    【クイズ】日本人が唯一「受賞していない」ノーベル…
  • 5
    中国人が便利な「調理済み食品」を嫌うトホホな理由…
  • 6
    ベゾス妻 vs C・ロナウド婚約者、バチバチ「指輪対決…
  • 7
    時代に逆行するトランプのエネルギー政策が、アメリ…
  • 8
    ウクライナの英雄、ロシアの難敵──アゾフ旅団はなぜ…
  • 9
    「中国のビットコイン女王」が英国で有罪...押収され…
  • 10
    フィリピンで相次ぐ大地震...日本ではあまり報道され…
  • 1
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 2
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 3
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 4
    カミラ王妃のキャサリン妃への「いら立ち」が話題に.…
  • 5
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 6
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 7
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 8
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外…
  • 9
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 10
    数千円で買った中古PCが「宝箱」だった...起動して分…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中