ニュース速報
ワールド

タイ新首相、4カ月以内の議会解散見据え短期の成果に照準か

2025年09月09日(火)11時32分

 タイ下院で5日に新首相に選出され、7日に正式就任したアヌティン氏(写真)は、財務相と外相にそれぞれ経験豊富なエコノミストと評判の高い元外交官を起用する考えを明らかにし、低迷する国内経済の立て直しと隣国カンボジアとの緊張緩和に努める姿勢を示した。バンコクで7日撮影(2025年 ロイター/Chalinee Thirasupa)

Orathai Sriring Thanadech Staporncharnchai

[バンコク 8日 ロイター] - タイ下院で5日に新首相に選出され、7日に正式就任したアヌティン氏は、財務相と外相にそれぞれ経験豊富なエコノミストと評判の高い元外交官を起用する考えを明らかにし、低迷する国内経済の立て直しと隣国カンボジアとの緊張緩和に努める姿勢を示した。4カ月以内の下院解散を約束する見返りに最大野党から支持を取り付けて首相の座をつかんだだけに、こうした課題に短期間で成果を出すことに照準を合わせるとみられる。

OCBCのシニアASEANエコノミスト、ラーワンヤー・ウェンカテーサワラン氏は「新首相がこれほど短期間で何を成し遂げられるかはまだ不透明だ」と述べ、政策は「次の選挙への土台づくりに重点が置かれる」と予想した。

アナリスト3人はアヌティン政権が支出拡大と政権の支持率向上を狙って短期的な景気刺激策を打ち出す可能性があり、成長を実現できなかった前政権のプロジェクトの再構築を図ることもあり得ると指摘した。

タイ当局によると今年の国内総生産(GDP)成長率予想は1.8―2.3%だが、ウェンカテーサワラン氏は成長率が下半期に0.5%へと急速に鈍るとみている。昨年の実績も2.5%と、他の東南アジア諸国に比べて低調だった。

タイは自動車や観光といった経済のけん引役である産業が圧力にさらされており、現金給付プログラムが停滞するなど政府施策も景気回復につながっていない。

マーチャント・パートナーズ・アセット・マネジメントのマネジングディレクター、プラキット・シリワッタナケット氏は「新政権は支持を獲得する必要があるため、当然ながら超ポピュリスト的な政策に傾くだろう。短期間では他にできることはない」と分析した。

アナリスト2人は、タイ中央銀行が新総裁の下で開く10月8日の次回会合で追加利下げを決め、新政権にとって追い風が吹く可能性が高いとの見方を示した。

スタンダード・チャータード銀行のシニアエコノミストのティム・リーラーパーン氏は中銀が50ベーシスポイント(bp)の利下げに踏み切る可能性もあるとみている。

一方で新政権は合意から6週間しかたっていないカンボジアとの停戦履行という課題にも直面する。

カンボジアのフン・マネット首相は7日にアヌティン氏の首相就任に祝意を伝えた。カンボジアの首相がこうした態度を見せるのは紛争後ではきわめて異例。

熱心な王室支持派で保守派エスタブリッシュメントと強いつながりを持つアヌティン氏は、国内で高まるナショナリズムとの間でバランスを取りながらカンボジアとの関係改善に臨む必要がある。

ロイター
Copyright (C) 2025 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

三菱電機、制御・運用技術セキュリティの米企業を12

ワールド

ネパール首相が辞任、反汚職デモ隊と警察の衝突続く

ワールド

イスラエル、エレサレム銃撃犯出身地で住宅解体命令 

ビジネス

アングル:石破首相退陣、経済運営に不確実性 重要度
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本の小説36
特集:世界が尊敬する日本の小説36
2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 2
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 3
    エコー写真を見て「医師は困惑していた」...中絶を拒否した母親、医師の予想を超えた出産を語る
  • 4
    石破首相が退陣表明、後継の「ダークホース」は超意…
  • 5
    ドイツAfD候補者6人が急死...州選挙直前の相次ぐ死に…
  • 6
    世論が望まぬ「石破おろし」で盛り上がる自民党...次…
  • 7
    もはやアメリカは「内戦」状態...トランプ政権とデモ…
  • 8
    「ディズニー映画そのまま...」まさかの動物の友情を…
  • 9
    ロシア航空戦力の脆弱性が浮き彫りに...ウクライナ軍…
  • 10
    金価格が過去最高を更新、「異例の急騰」招いた要因…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    「怖すぎる」「速く走って!」夜中に一人ランニングをする女性、異変を感じ、背後に「見えたモノ」にSNS震撼
  • 3
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 4
    眠らないと脳にゴミがたまる...「脳を守る」3つの習…
  • 5
    【動画あり】9月初旬に複数の小惑星が地球に接近...…
  • 6
    「あのホラー映画が現実に...」カヤック中の男性に接…
  • 7
    「生きられない」と生後数日で手放された2本脚のダ…
  • 8
    50歳を過ぎても運動を続けるためには?...「動ける体…
  • 9
    「よく眠る人が長生き」は本当なのか?...「睡眠障害…
  • 10
    「稼げる」はずの豪ワーホリで搾取される日本人..給…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 5
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 6
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 7
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...…
  • 8
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
  • 9
    「怖すぎる」「速く走って!」夜中に一人ランニング…
  • 10
    「死ぬほど怖い」「気づかず飛び込んでたら...」家の…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中