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アングル:石破首相退陣、経済運営に不確実性 重要度増す10月日銀会合

2025年09月09日(火)17時57分

 石破茂首相の退陣表明に伴い、日銀の金融政策運営の観点では10月の金融政策決定会合の重要度が増すことになりそうだ。東京都内の日銀本店前で1月23日撮影(2025年 ロイター/Issei Kato)

Takahiko Wada

[東京 9日 ロイター] - 石破茂首相の退陣表明に伴い、日銀の金融政策運営の観点では10月の金融政策決定会合の重要度が増すことになりそうだ。次期政権を誰が担い、どんな政策を打ち出すかは日本の経済・物価の先行きにとって重要で、次期政権にかかる情報は少なくとも10月会合まで待つ必要があるためだ。市場では足元、10月利上げの織り込みが低下しているが、10月会合の時点では次の利上げ時期を判断する上で必要なデータが集まってくる。

<インフレ高進リスク>

利上げ路線を継続する日銀にとって、利上げ判断を左右する「不確実性」は米国の高関税による海外経済、とりわけ米国経済と国内経済への影響、コメ価格をはじめとする食料品価格の動向だった。しかし、石破首相が退陣することで新政権の政策が新たな不確実性に加わる。

誰が次の首相に就任し、どういう政策を打ち出すかは、日本の経済・物価に重要な意味を持つ。市場で財政規律重視とみられてきた石破首相が退陣し、新首相の政策次第では、これまでの経済・物価見通しに影響を与える可能性がある。

日銀では、新首相が打ち出す財政政策の規模感などによってインフレ高進リスクが高まる場合は利上げペースを速める必要が出てくるとの声が出ている。コメをはじめとする食料品価格の高騰でインフレ圧力が高まっており、関税による経済の下押しが限定的と判断できれば利上げに踏み切るべきだとの声がすでに出ており、財政由来の物価上振れリスクは早期の利上げを後押しする可能性がある。

一方で、自民党の次の総裁が決まる過程で市場が動揺する可能性もある。日銀が為替や金利動向を注視する中で、市場が混乱すれば動きづらくなる。

昨年の自民総裁選では高市早苗氏が決選投票まで進んだ。市場では高市氏が次期首相に就けば、日銀の利上げをけん制するとの思惑が出ているが、わずか1年の間に物価を巡る環境は変化している。物価高対策を巡り、参院選で自民党は大敗しており、日銀では高市氏の主張が変化するのか注目されている。

<市場の織り込みは低下>

石破首相の退任表明で、市場が織り込む10月会合での利上げ確率は急低下した。東短リサーチ/東短ICAPによると、翌日物金利スワップ(OIS)市場が織り込む10月会合での利上げ確率は前週末の50%付近から足元20%台まで急低下した。

SBI新生銀行の森翔太郎シニアエコノミストは「新政権の政策を見極める必要性から、日銀は年内は利上げに動きにくいのではないか」と述べている。

9月決定会合の時点では十分とは言えないが、金融政策運営に当たって不確実性をもたらしている諸要因それぞれの帰すうを占う国内外の情報が10月会合までに集まってくる。10月1日には9月調査日銀短観、6日に支店長会議、さらに10月後半から本格化する3月期決算企業の中間決算では関税の影響のみならず通期予想の修正がどれだけあるかにも関心が向かう。

自民党総裁選も新たな重要イベントとなる。自民党は9日、総裁選の投開票を10月4日に行う方針を決めた。その後の首相指名選挙などを経て10月中旬以降に新政権が始動する。

日銀の一部では、一連のデータや情報を確認し、基調的な物価上昇率が2%に向けて着実に上昇していくシナリオに確信が高まれば、10月会合で利上げを議論する可能性も意識される。ただ、米経済への関税の影響見極めは10月会合時点でもつかない可能性があるほか、政局が混迷すれば利上げどころではなくなる。10月会合に向けて集まる情報やデータをしっかりみていく考えだ。

ロイター
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