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対日関税で米大統領令、自動車2週間以内に15%に コメ輸入75%増

2025年09月05日(金)15時42分

 9月5日 トランプ米大統領は4日(米国時間)、日本から輸入する自動車などに対する関税引き下げに関する大統領令に署名した。写真は7月23日、横浜で撮影(2025年 ロイター/Kim Kyung-Hoon)

(内容を追加しました)

Andrea Shalal David Shepardson Tamiyuki Kihara

[ワシントン/東京 5日 ロイター] - トランプ米大統領は4日(米国時間)、日本から輸入する自動車などに対する関税引き下げに関する大統領令に署名した。自動車も含め従来の関税率が15%未満の品目は15%とし、15%以上だった品目には追加関税が課されないと明記した。大統領令の早期発出を求めて訪米中の赤沢亮正経済再生相は、自動車関税の新税率について、2週間以内に発効するとの見通しを示した。

米側の求めに応じて、両国は5500億ドル(約81兆円)の対米投融資に関する覚書と7月の合意内容を再確認する共同声明を作成した。赤沢再生相によると、米国が医薬品や半導体の関税を今後引き上げる場合、日本が他国よりも条件面で不利にならないことを明記。日本製の航空機や同部品に米国が関税を課さないことも、改めて盛り込まれたという。

<7月合意の着実な実施>

日米は7月、米側が日本への相互関税と自動車関税をともに15%へ見直すことで合意した。自動車関税は4月に適用された25%から12.5%に引き下げ、既存の税率と合わせて計15%となることで合意していたが、時期が明らかになっていなかった。

赤沢再生相は、ホワイトハウスでトランプ大統領と並んで撮影した写真を交流サイトに投稿。笑顔の絵文字とともに「やっと」と書き込んだ。米国との関税交渉を担当する赤沢氏は、4月からこれまでに10回訪米した。

自動車関税引き下げについては、大統領令の内容が連邦官報に掲載されてから7日以内に詳細を官報で公示する。関税率が既に15%以上の品目に追加で課税しない特例措置は、8月7日にさかのぼって適用される。

トヨタ自動車は「当社が米国で販売する自動車の8割近くは北米で生産されているが、この枠組みは大いに必要とされていた明確性を提供するものだ」とコメントした。

林芳正官房長官は今回の大統領令について、7月の日米合意の着実な実施として歓迎すると語った。石破茂首相は「経済や雇用への影響が極小化されることに万全を期していきたい」と述べた。

政治リスクコンサルティング会社ユーラシア・グループのデビッド・ボーリング氏は、貿易合意をまとめることは石破氏留任の論拠になるものの、党内の「石破降ろし」に耐えられる可能性は低いと指摘。石破氏が退陣に追い込まれる可能性を60%と見積もっている。

<米国産米、ミニマムアクセス枠内で75%増>

大統領令は「本協定に基づき、米国は日本からのほぼ全ての輸入品に15%の基本関税を課す。自動車および自動車部品、航空宇宙製品、ジェネリック医薬品(後発薬)、米国で自然に入手できない、または生産されていない天然資源については、別途セクター別の特例措置を適用する」と記した。

同時に、日本がミニマムアクセス(最低輸入量)の枠内で米国産コメの輸入を75%増やすと明記したほか、日本が合意した5500億ドルの対米投資について米政府が投資対象を「選定する」と盛り込んだ。

また、日本が「トウモロコシ、大豆、肥料、バイオエタノール(持続可能な航空燃料用を含む)などの米農産物」やその他米産品を年間総額80億ドル購入するとしている。

米側は日本の履行状況を監視し、約束が守られていない場合は大統領令を修正できるとの条項も明記した。

ベセント米財務長官はⅩ(旧ツイッター)への投稿で今回の合意について、日米の経済的結びつきを強化するものだとの考えを示した。

ラトニック米商務長官は赤沢氏と会話している様子を撮影した動画をXに投稿。この中で、今回の大統領令は「驚くべき歴史的な合意を発効させるものだ」と述べた。

5日の東京市場では、今回の大統領令について、不透明感が払拭されるため株価にプラスとの指摘が聞かれる一方、15%の関税がかることは事実で、日経平均が上値を追うにはさらなる材料が必要との声も出ている。

ロイター
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