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ロシアがウクライナ戦闘で使用のドローン、中国製エンジンの密輸が判明

2025年07月24日(木)13時29分

 7月23日、ウクライナでの戦闘で使われているドローン(小型無人機)を製造するロシアの国営兵器メーカーのIEMZクポルに対し、中国製エンジンがフロント企業を経由して密輸されていることが分かった。ロシアのドローン、キーウで4日撮影(2025年 ロイター/Vladyslav Sodel)

[23日 ロイター] - ウクライナでの戦闘で使われているドローン(小型無人機)を製造するロシアの国営兵器メーカーのIEMZクポルに対し、中国製エンジンがフロント企業を経由して密輸されていることが分かった。欧米の対ロシア制裁に違反しており、発覚を避けるために「産業用冷凍ユニット」とのラベルを貼り付けて出荷していた。欧州の安全保障当局者3人が明らかにするとともに、ロイターが関連文書を確認した。

契約書と請求書、通関書類からなる関連文書によると、米国と欧州連合(EU)が昨年10月に実施した制裁措置に違反した中国製エンジンの調達により、IEMZクポルは攻撃型長距離ドローン「ガルピヤ―A1」を増産できた。

ロイターが確認したIEMZクポルの内部文書によると、同社は2024年に2000機生産していたガルピヤを25年には6000機超製造する契約をロシア国防省との間で結んだ。この文書よると、4月までに1500機超が納入された。

ウクライナの軍事情報機関はロイターに対し、ロシア軍がウクライナ領内深くで民間人や軍事目標を攻撃するためにガルピヤを配備しており、月に約500機を使用していると説明した。

ロイター通信は昨年9月、IEMZクポルが中国企業、厦門リンバッハ(Xiamen Limbach Aircraft Engine)が製造したエンジン「L550E」などの中国技術を使ってガルピヤを生産していると報じた。ロイターが報じた1カ月後、米国とEUは厦門リンバッハを含めたドローンの製造に関わる複数の企業に制裁を科した。

ロイターが確認した請求書、IEMZクポルの内部文書、輸送書類によると、制裁後に「北京Xichao国際技術・貿易」と名乗る中国企業がIEMZクポルに対してL550Eの供給を始めた。

北京Xichaoがどのようにして厦門リンバッハからエンジンを入手したのかは特定できなかった。

厦門リンバッハはロイターのコメント要請に応じず、北京Xichaoとは連絡が取れなかった。IEMZクポル、ロシアの産業貿易省と国防省はいずれもコメントの要請に応じなかった。

中国外務省はロイターに対し、ガルピヤの部品が輸出されていることは知らなかったとし、中国の法律と国際的な義務に従って軍民両用製品の海外販売を管理してきたと説明。その上で「中国は、国際法上の根拠を欠き、国連安全保障理事会から承認されていない一方的な制裁に常に反対してきた」ともコメントした。

EU欧州委員会にもコメントを求めたが、すぐには回答を得られなかった。

EUはIEMZクポルがロシアの軍需部門に関与しているとして22年12月から、米国は23年12月からそれぞれ制裁を適用している。

ロイター
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