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中国・EU首脳が会談、欧州委員長「貿易関係は転換点に」

2025年07月25日(金)05時00分

 7月24日、中国北京でEU・中国首脳会談が始まり、フォンデアライエン欧州委員長(写真)とコスタ欧州理事会議長が習近平国家主席と会談した。ブリュッセルで16日撮影(2025年 ロイター/Yves Herman)

Liz Lee Laurie Chen Xiuhao Chen

[北京 24日 ロイター] - 欧州連合(EU)欧州委員会のフォンデアライエン委員長は24日、中国の習近平国家主席と北京の人民大会堂で会談した。緊迫した雰囲気の中、会談を締めくくる発言で、中国との貿易関係は「明確な転換点」を迎えているとの考えを示した。

同委員長は習主席、李強首相との会談後の記者会見で「われわれは貿易、投資、地政学的な問題について非常に率直かつオープンに懸念を表明し、解決策も部分的に特定した」と説明。

米国との貿易協定締結の可能性に関する質問には、EUは交渉による解決の実現に重点を置いているとしつつ、「満足のいく結果が得られるまで」他のあらゆる手段も検討するとの考えを示した。

また、EU首脳らは会談で、ウクライナ戦争で中国がロシアに停戦を働きかけることを期待しているとの考えも表明した。フォンデアライエン委員長は会見で「停戦が実現し、交渉のテーブルに着くこと、そして流血に終止符を打つための解決策を見出そうとする意志があることが重要だ」との考えを改めて示した。

双方は気候に関する共同声明も発出。経済全体にわたる新たな気候行動計画への取り組みを改めて表明した。

国営新華社通信によると、習氏は会談で「欧州が現在直面している課題は中国から生じたものではない」と述べ、EUに対し「開かれた協力関係を堅持し、意見の相違や摩擦を適切に処理する」よう求めた。

さらに「壁や要塞を築く」ことによって競争力を向上させることはできず、「デカップリング(分断)と鎖の断ち切り」は孤立をもたらすだけだと指摘した。

「欧州側が貿易・投資市場を開放し続け、制限的な経済・貿易手段の使用を控えることを期待する」と訴えた。

昨年に3058億ユーロ(3600億ドル)まで膨らんだEUの対中貿易赤字について「双方の協力が深まるにつれて不均衡も拡大した。われわれは転換点に達した」とし、「関係のリバランスが不可欠だ。中国と欧州がそれぞれの懸念を認識し、真の解決策を示すことが極めて重要だ」と述べた。

一方、中国国営中央テレビ(CCTV)によると、習氏はEU側に「正しい戦略的選択」をするよう求めた。EUの対中強硬姿勢を暗に批判した形だ。

習氏は「国際情勢が厳しく複雑になるほど、中国とEUは意思疎通を強化し、相互信頼を高め、協力を深める必要がある」と伝え、「中国と欧州の指導者は人民の期待に応える正しい戦略的選択をすべきだ」と述べた。

フォンデアライエン氏は会談前にXへの投稿で、この会談は「双方の関係を前進させ、バランスを取り戻す」機会だと指摘。「互恵的な協力が可能と確信している」と述べ、融和的なムードを演出していた。首脳会談までの数週間には貿易を巡る応酬や欧州高官からの強硬な発言があった。

新華社も24日の論評で、中国は欧州にとって「重要なパートナー」で、貿易、気候、世界統治など、さまざまな分野で利益を共有しているとし、対立姿勢を弱めたようだった。

今回の会談は外交関係樹立50年を記念して開催された。欧州首脳の訪問日程は中国側の要請で当初予定の半分の1日に短縮された。

今回の会談は貿易摩擦やウクライナ問題が主な議題とみられる。欧州側は電気自動車(EV)や中国の過剰生産能力などの問題も提起する見通し。

北京外国語大学の崔洪建教授(外交政策)は、トランプ米大統領の2期目の開始当初は、米国による貿易上の課題に取り組むために協力するという中国とEUの合意がより強固だったと指摘した。

しかし「最近、状況は変化した」と述べ「EUは米国との妥協を続けており、現状ではEUと中国の関係強化に向けた推進力が欠如している」との見方を示した。

ロイター
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