対日関税25%、首相が協議継続を指示 GDP押し下げ0.85%も

米国が日本への相互関税を8月1日から25%にすると通知してきたことに対し、政府は協議の期限を延長するものだとし、引き続き合意の可能性を探る一方、国内への影響緩和に向けて対応を進めていく構えだ。写真は石破茂首相。6月撮影。代表撮影(2025年 ロイター)
[東京 8日 ロイター] - 米国が日本への相互関税を8月1日から25%にすると通知してきたことに対し、政府は協議の期限を延長するものだとし、引き続き合意の可能性を探る一方、国内への影響緩和に向けて対応を進めていく構えだ。
石破茂首相は8日、米国の関税措置に関する総合対策本部で、米政権の方針について「誠に遺憾だ」とした上で、関係閣僚に対し、国益を守りつつ日米双方の利益となるような合意の可能性を探り、一連の関税措置が国内産業や雇用に与える影響の緩和に万全を期すよう指示した。
首相はこれまで日米協議が合意に至らなかったことは、日本として安易な妥協を避け、厳しい協議を続けてきたからだと説明。25%という数字について「米大統領が最近発信した30%や35%ではなく、事実上据え置きするものであり、かつ協議の期限を延長するものだった」との認識を示した。
トランプ米大統領は7日(米国時間)、日本からの輸入品について8月1日から25%の関税を課すとする書簡を公表。交渉期限を8月1日まで延長する大統領令に署名した。
<GDPへの影響、マイナス0.85%か>
国内経済への影響に関して、野村総研の木内登英エグゼクティブ・エコノミストは25%の相互関税が適用された場合、日本のGDPへの影響は現状のマイナス0.47%からマイナス0.85%へ拡大すると指摘する。
日本総研の藤本一輝研究員は「対米輸出金額は年間4-6兆円減少し、輸出企業の収益は最大で25%下押しされるだろう」と指摘。企業業績が悪化すれば賃上げ機運のトーンダウンは避けがたく、春闘での賃上げ率は来年は4%を割り込むことも想定されうるとみる。
上智大学の前嶋和弘教授は、交渉が進めばトランプ氏は関税をもう少し下げてくる可能性もあると指摘する一方、トランプ氏が示した関税の水準がニューノーマルになっていく状況も否定できないという。
<円安進行、日銀利上げ観測後退>
8日午前の東京市場は円安、株高の動きとなっている。外国為替市場では円安の動きが強まり、ドルは一時146円44銭を付けた。関税率引き上げによる日銀の利上げ期待の後退を指摘する声が出ている。
関西みらい銀行のストラテジスト、石田武氏は今回の関税発表で影響があるのは、日銀の利上げシナリオだと指摘。関税猶予期間中の7月会合で何か新しい判断を出すことは不可能で、市場の日銀早期利上げ観測は後退せざるを得ないとみる。
一方、日経平均株価は安寄り後にいったん反発。「今回の措置はそこまで厳しくなく、交渉の余地はあるとの判断ではないか」(大和証券日米株チーフストラテジスト、坪井裕豪氏)との指摘もでている。