マスク氏が税制・歳出法案を改めて批判、「不快で忌まわしい存在」

6月3日、 米実業家イーロン・マスク氏(写真)は議会上院で審議されている包括的な税制・歳出法案を「不快で忌まわしい存在」と呼び、改めて厳しく批判した。ホワイトハウスで5月撮影(2025年 ロイター/Nathan Howard)
By David Morgan, Doina Chiacu
[ワシントン 3日 ロイター] - 米実業家イーロン・マスク氏は3日、議会上院で審議されている包括的な税制・歳出法案を「不快で忌まわしい存在」と呼び、改めて厳しく批判した。
この「一つの大きく美しい法案」には、トランプ大統領の1期目に導入された減税の延長など政権の看板政策が盛り込まれている。既に下院で可決され、与党共和党は来月の上院での可決を目指している。
政府効率化省(DOGE)を事実上率いていたマスク氏は退任前にも法案を批判していたが、この日はXに「申し訳ないが、もう我慢ならない。この巨大で言語道断、何でも詰め込まれた状態の歳出法案は不快で忌まわしい存在だ」と投稿し、糾弾の語調が強まった。
さらに「法案に賛成した議員は恥を知れ。あなた方は悪いことをしたと重々承知しているからだ」と付け加えた。
マスク氏は、法案は既に多額の財政赤字を2兆5000億ドルに膨らませ、国民に持続不可能な債務を背負わせると指摘した。
共和党指導部はこうしたマスク氏の計算は正しくないと反論。ジョンソン下院議長は「失礼ながら、私の友人のマスク氏はひどい間違いをしている」と語った。また上院トップのスーン院内総務は「この法案が実際にどういう内容かマスク氏がさらに精査する機会を得て、別の結論を下すことを期待する」と述べた。
一方で法案に反対する共和党保守強硬派はマスク氏に同調している。ウォーレン・デビッドソン下院議員はマスク氏の投稿に「大きく美しいツイートだ」と返信。マイク・リー上院議員はXで、この法案と今後の歳出措置の審議を通じて財政赤字削減に取り組むことが有権者の期待に沿う道だと訴えた。
議会予算局(CBO)は法案が成立すれば、既に36兆2000億ドルに達している政府債務が約3兆8000億ドル押し上げられると推計している。
下院は先月、この法案を1票差で可決した。上院では下院版の修正が見込まれる。
スティーブ・デインズ上院議員によると、税制を担当する上院財政委員会の共和党議員が4日午後、ホワイトハウスでトランプ大統領と会談し、法案のビジネス関連減税措置の恒久化について協議する予定という。こうした動きは法案のコストを大幅に引き上げるとアナリストは警告している。
ホワイトハウスは法案に対するマスク氏の批判を退けた。レビット報道官は「大統領はマスク氏がこの法案についてどのような立場を示しているかをすでに知っている。大統領の意見は変わらない。これは一つの大きく美しい法案であり、大統領はそれを堅持している」と語った。