ニュース速報
ワールド

独ロ首脳が電話会談、ウクライナ大統領「パンドラの箱開けた」

2024年11月16日(土)04時27分

ドイツのショルツ首相が15日、ロシアのプーチン大統領と電話会談し、ウクライナからのロシア軍撤退と戦争終結を促した。ドイツ政府報道官が明らかにした。 写真は2022年2月撮影(2024年 ロイター/ Johanna Geron)

[ベルリン/キーウ/モスクワ 15日 ロイター] - ドイツのショルツ首相は15日、ロシアのプーチン大統領と電話会談し、ウクライナからのロシア軍撤退と戦争終結を促した。ドイツ政府報道官が明らかにした。 

ロシア大統領府も、プーチン氏とショルツ氏の電話会談を確認。会談はドイツの要請で行われたとし、プーチン氏はウクライナ戦争終結のためのいかなる合意も、ロシアの安全保障上の利益を考慮に入れ、「新たな領土の現実」を反映したものでなければならないと伝えたと明らかにした。

ウクライナのゼレンスキー大統領は、両首脳の電話会談が「パンドラの箱」を開けたと批判。今後も同様の対話が行われる可能性があるとし、「まさにプーチン氏が長年望んでいたことだ。プーチン氏にとって孤立を弱める上で非常に重要だ」と述べた。

ウクライナでの紛争を「公正な平和」で終わらせる努力を損なうことになるという認識も示した。

これに先立ち、ウクライナ大統領府の関係筋によると、ゼレンスキー氏はショルツ氏に対し、ロシアの孤立状態が緩和され戦争継続につながるとの懸念から、プーチン氏との電話会談を控えるよう警告。「プーチン氏は真の平和を望んでおらず、一時的な休戦を求めているだけだ」とし、電話会談はプーチン氏を利するだけだと述べたという。

ドイツ政府報道官によると、ショルツ氏はプーチン氏に対し、公正かつ永続的な平和を目指してウクライナと交渉する意思を示すよう要請。ドイツは可能な限りウクライナを支援するという立場も強調した。また、北朝鮮がロシアに派遣した兵士をウクライナとの戦闘に投入することは紛争の深刻なエスカレーションにあたると明確に伝えた。

両首脳は今回の電話会談後も連絡を維持することで合意。ショルツ氏はプーチン氏との会話内容を同盟国やパートナー国のほか、欧州連合(EU)と北大西洋条約機構(NATO)首脳に報告する。

ロシア大統領府によると、プーチン氏はウクライナ戦争終結を巡る合意について、紛争の根本的な原因に対処するため、ロシアの安全保障を考慮し、ウクライナの領土の一部をロシアが実効支配しているという「新たな領土の現実」を踏まえたものでなくてはならないと伝えた。

プーチン氏が示した見解は6月に表明したものと同一。当時プーチン氏は、ウクライナがNATO加盟方針を放棄し、ロシアが制圧したウクライナの4地域の全てを引き渡せば戦争は終結すると表明した。ウクライナはこうした条件は降伏に等しいとして拒否している。

プーチン氏はこのほか、ロシアとドイツとの関係の「前例のない悪化」について言及。原因はドイツの非友好的な行動にあるとの考えを示した。同時に、エネルギー問題を巡り、ドイツが関心を示せば取引の検討に応じる用意があると伝えた。

ロシアのペスコフ大統領報道官は今回の会談について「ウクライナを巡り詳細、かつ率直に議論した」とし、「かなり大きな見解の相違があるが、対話が行われたということ自体が極めて肯定的だ」と述べた。

ショルツ氏とプーチン氏の直接会談は2022年12月以来。独政府高官によると、両首脳は約1時間にわたり会談した。

ショルツ氏はプーチン氏との電話会談前にゼレンスキー氏とも会談しており、プーチン氏との会談後にもゼレンスキー氏と再度会談する。 

ショルツ氏がこのタイミングでプーチン大統領と電話会談を行った理由は不明。ポーランド国際問題研究所のダニエル・シェリゴフスキー氏は「総選挙を控える中、ショルツ氏はプーチン氏との対話が国内での自身の立場の強化につながると考えている」との見方を示した。

ドイツでは連立政権の崩壊に伴い来年2月23日に総選挙が実施される。

ロイター
Copyright (C) 2024 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

ロサンゼルス港、輸入急増見込まず 対中関税引き下げ

ビジネス

インタビュー:日本発のテーマパーク「第3勢力」に=

ビジネス

中国最優遇貸出金利、昨年10月以来の引き下げ 国有

ワールド

イラン、ウラン濃縮停止を拒否 米との協議決裂を警告
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:関税の歴史学
特集:関税の歴史学
2025年5月27日号(5/20発売)

アメリカ史が語る「関税と恐慌」の連鎖反応。歴史の教訓にトランプと世界が学ぶとき

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 2
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 3
    【クイズ】世界で1番「太陽光発電」を導入している国は?
  • 4
    【裏切りの結婚式前夜】ハワイにひとりで飛んだ花嫁.…
  • 5
    中ロが触手を伸ばす米領アリューシャン列島で「次の…
  • 6
    コストコが「あの商品」に販売制限...消費者が殺到し…
  • 7
    実は別種だった...ユカタンで見つかった「新種ワニ」…
  • 8
    「運動音痴の夫」を笑う面白動画のはずが...映像内に…
  • 9
    ワニの囲いに侵入した男性...「猛攻」を受け「絶叫」…
  • 10
    日本人女性の「更年期症状」が軽いのはなぜか?...専…
  • 1
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 2
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 3
    ワニの囲いに侵入した男性...「猛攻」を受け「絶叫」する映像が拡散
  • 4
    カヤック中の女性がワニに襲われ死亡...現場動画に映…
  • 5
    母「iPhone買ったの!」→娘が見た「違和感の正体」に…
  • 6
    トランプ「薬価引き下げ」大統領令でも、なぜか製薬…
  • 7
    「運動音痴の夫」を笑う面白動画のはずが...映像内に…
  • 8
    中ロが触手を伸ばす米領アリューシャン列島で「次の…
  • 9
    あなたの下駄箱にも? 「高額転売」されている「一見…
  • 10
    ヤクザ専門ライターが50代でピアノを始めた結果...習…
  • 1
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山…
  • 5
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの…
  • 6
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得…
  • 7
    【クイズ】世界で2番目に「軍事費」が高い国は?...1…
  • 8
    部下に助言した時、返事が「分かりました」なら失敗…
  • 9
    5月の満月が「フラワームーン」と呼ばれる理由とは?
  • 10
    ワニの囲いに侵入した男性...「猛攻」を受け「絶叫」…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中