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インタビュー:日本発のテーマパーク「第3勢力」に=ジャングリア沖縄の森岡氏

2025年05月20日(火)13時43分

沖縄北部に7月開業するテーマパーク「ジャングリア沖縄」の運営会社・刀(大阪市)の森岡毅・最高経営責任者(CEO)はロイターのインタビューに応じ、「沖縄の集客施設の中で最大の売り上げを出せる会社になりたい。沖縄北部に人を誘引することで沖縄経済に貢献したい」と語った。沖縄での成功を足がかりに株式上場し、漫画やアニメなど日本のコンテンツを活用したテーマパークをアジア圏で展開する構想も披露した。16日撮影(2025年 ロイター/Kentaro Okasaka)

Kentaro Okasaka Rocky Swift

[東京 20日 ロイター] - 沖縄北部に7月開業するテーマパーク「ジャングリア沖縄」の運営会社・刀(大阪市)の森岡毅・最高経営責任者(CEO)はロイターのインタビューに応じ、「沖縄の集客施設の中で最大の売り上げを出せる会社になりたい。沖縄北部に人を誘引することで沖縄経済に貢献したい」と語った。沖縄での成功を足がかりに株式上場し、漫画やアニメなど日本のコンテンツを活用したテーマパークをアジア圏で展開する構想も披露した。

ジャングリアは今帰仁村のゴルフ場跡地に開発され、敷地面積は東京ドーム約13個分の60ヘクタール。装甲車に乗り込み肉食恐竜から逃げる「ダイナソーサファリ」など、「大自然没入型」のアトラクションを特徴とする。1月に都内で開いた発表会に石破茂首相が出席して認知度が上がり、事前予約は想定を大きく上回るという。

課題の1つは、北部地域は県の玄関口の那覇空港から車で1時間30分程度かかること。観光振興も遅れ、北部の1人当たり所得は那覇に比べて2割低い。一方で域内には沖縄美ら海水族館などもあり、森岡氏は森林を生かしたジャングリアの開業で「多くの人が北部を訪れ、南部のオーバーツーリズムも緩和される」と述べた。自身の計算に基づき、ジャングリアが成功する確率を70%以上とみる。

関西大学の宮本勝浩名誉教授と大阪府立大学の王秀芳客員研究員が1月にまとめた試算によると、経済効果はオープン後15年間で約6兆8000億円。88万人の雇用を生むと推計する。

森岡氏は「北部の需要が増えれば交通インフラ整備が必要になる。いずれは北部に国際空港を造るべきだ」と話した。

地元の「高度観光人材」育成にも一役買う。名護市にある公立大の名桜大と産学連携包括協定を締結。学生にマーケティングや観光を教えたり、インターンを受け入れたりする一方、育った人材を即戦力として活用することも想定する。森岡氏は「常に情熱を持った若者を受け入れ、鍛えながらパークを回していくウィンウィンのシステム」の構築を目指すことに意欲を示した。

入場料は国内在住者が税込みで6930円、訪日客が8800円。官民ファンド「クールジャパン機構」から出資を受けるなど「日本の納税者の皆さんのお世話になったという恩義」から、国内在住者に割引料金を適用するという意味合いもあるという。

<USJ再生の立役者、インバウンド向け体験型ツアーも>

森岡氏は、経営危機に陥った大阪のユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)をマーケティング戦略で再建した立役者として知られる。独立後の2017年に刀を創業。ジャングリア沖縄は10年越しのプロジェクトだが、視線は既に先を向いている。世界的知名度のある日本のアニメなどのIP(知的財産)を活用した「オールジャパンパーク」を成長するアジアなど海外で展開するアイデアを描く。

森岡氏は「世界の消費者は爆発的に増えている。ディズニーランド、USJに次ぐ第3の選択肢が世界の都市にあってもいい」と語った。

ジャングリアの事業費700億円は、ディズニーなどと比べてはるかに小さい。だが、事業費の大きいディズニーなどは投資回収のため巨大都市にしか進出ができない一方、1000億円規模であれば進出可能な都市は広がる。

「巨大戦艦がゆえにできないことはいっぱいある。その下をかいくぐって日本発の世界の第3勢力をつくる。それを私の将来の仕事にしたい」と強調。K-POPやドラマなどエンタメ業界が席巻するもののテーマパークには恵まれていない韓国、台湾、インドネシアなどを例に挙げ「僕らなら行ける」と意欲を示した。「ミッキーマウスのように(ドラゴンボールの)孫悟空がみんな大好きな未来が造れたら、日本にとって幸いで、日本の国内総生産(GDP)にもなる」

ジャングリアが成功すれば、海外展開する際の資金調達を念頭に上場も視野に入れる。森岡氏は「パブリックカンパニーとして公共性を増し、広く日本の層に支えられている刀の方が会社として信用される」と話す。

森岡氏は、富裕層のインバウンドをターゲットに据えたツアー会社も設立した。沖縄だけでなく、全国のツアー運営者と連携して体験型のツアーを売り込む仕組みで、「日本には付加価値の高い輝く体験の機会がたくさんある。そんな潜在性に火を付けたい」と語った。

*インタビューは16日に行いました。

(岡坂健太郎、Rocky Swift 編集:久保信博)

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