ニュース速報
ワールド

焦点:鳥インフルの牛への感染広がる米ミシガン州、農家は対策に消極的

2024年07月15日(月)16時28分

 7月10日、高病原性鳥インフルエンザの乳牛を介したヒトへの感染が報告された米ミシガン州は、感染拡大防止策の導入を積極的に進めている。写真は6月、立ち入りを制限する看板が掲げられたミシガン州マーティンの農場(2024年 ロイター/Tom Polansek)

Tom Polansek P.J. Huffstutter Leah Douglas

[マーティン(米ミシガン州) 10日 ロイター] - 高病原性鳥インフルエンザの乳牛を介したヒトへの感染が報告された米ミシガン州は、感染拡大防止策の導入を積極的に進めている。しかし一部の農家は負担が増すなどとして抵抗している。

米国では3月末に牛の鳥インフル感染が初めて確認され、その後牛を介したヒトへの感染が4人確認されている。うち2人はミシガン州で感染し、いずれも酪農場の従業員だ。

ミシガン州は鳥インフルの牛への感染が確認された12州で検査数が最も多く、その積極的な取り組みは他の州から注目を浴びている。

しかしミシガン州の生産者、州保健当局者、研究者、業界団体への取材と初期的データから、酪農家の感染抑制策や研究への参加は限定的なことが明らかになった。地元保健当局からの連絡は無視される場合があり、酪農研究資金は手付かずの状態で、作業員は追加的な感染防護策を講じないまま搾乳を続けている。

ミシガン州マーティンの酪農家のブライアン・デマンさん(37)は、今回の鳥インフル感染拡大は新型コロナウイルス感染症のパンデミックを思い出させると話した。デマンさんは、州の鳥インフル抑制策は義務ではなく推奨策とした方が農家に広く受け入れられると考えている。

「こうした対策に効果があるかどうかは誰にも分からない」と、農家の間に広がる不信感を代弁。「2020年のようにあれこれ指示されたくない」と言う。

農家や農業労働者によると、今年の春に多くの酪農家は従業員に追加の防護策提供を行わず、政府の勧告に従わなかった。デマンさんも、ウイルスの拡散経路がはっきりしないという理由でマスクのような防護策に資金を投じなかった。

<手薄な対策>

ミシガン州には約900戸の認可酪農場が点在。乳牛は開放型の牛舎で飼育され、飼料は保護用のシートで覆われており、重しは古タイヤだ。

ミシガン州農業局長のティム・ボーリング氏は、農家が牛の鳥インフル検査に消極的なのは、偏見を持たれ、経済的に不利益を被るのではないかとの懸念が原因だと指摘する。

ミシガン州は感染した群れを持つ農場に研究参加を促すために最大2万8000ドル(約452万円)を支給しており、州によるとこれまでに十数カ所の農場が計画に関心を示したという。また連邦政府も資金支援を行っている。

米農務省は鳥インフルの検査を強化するため、酪農家が毎週牛乳タンクを調べることができる任意のプログラムを開始。6州で6つの酪農家がそれぞれ1つの乳牛群を登録しているが、ミシガン州の酪農家からの申し込みはまだない。

<新たな脅威>

ミシガン州農業局によると、200人強の人員が家禽および牛の鳥インフル感染に対応しており、感染拡大の調査で農務省と協力。「ミシガン州は診断や感染の特定で素晴らしい仕事をしている」(ノースカロライナ州の州獣医師、マイク・マーティン氏)と、他州の獣医師から評価されている。

一方、酪農家は、次は自分の乳牛が感染するかもしれないと常に心配しているが、どのように感染を防ぐべきか確信が持てない。

ミシガン州レムスの酪農家、ダグ・チャピンさんは、従業員にウイルスのリスクを知らせるためにミーティングを開いた。作業員に保護眼鏡を着用させようとしているが、これまでは牛乳が飛び散ったら眼鏡を拭かなければならないと反対された。

ミシガン州は血液検査で酪農作業員の過去の感染を調べる全米初の試みを計画している。すでに数千人規模を対象に鳥インフル症状を監視。複雑な接触追跡システムを駆使して1日に3回テキストメッセージを送信していると、イオニア郡保健局の保健官であるチャド・ショー氏は語った。

しかし一部の酪農家は地元保健当局への協力に消極的だ。

ブランチ・ヒルズデール・セントジョセフ地域の保健当局者によると、鳥インフルの感染者が確認されたため、季節労働者に医療を提供しようと農場に連絡を取り始めたが、ほとんど反応がないという。

*システムの都合で再送します。

ロイター
Copyright (C) 2024 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

シリア暫定大統領、プーチン氏と会談 ロシア軍の駐留

ビジネス

カナダ中銀、2会合連続で金利据え置き FRB独立性

ワールド

米財務長官、円買い介入を否定 「強いドル政策」強調

ビジネス

金価格、初の5300ドル突破 経済不透明感やドル安
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:高市 vs 中国
特集:高市 vs 中国
2026年2月 3日号(1/27発売)

台湾発言に手を緩めない習近平と静観のトランプ。激動の東アジアを生き抜く日本の戦略とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界でも過去最大規模
  • 3
    スペースXの宇宙飛行士の帰還が健康問題で前倒しに...宇宙船で一体何が?
  • 4
    一人っ子政策後も止まらない人口減少...中国少子化は…
  • 5
    町長を「バズーカで攻撃」フィリピンで暗殺未遂、大…
  • 6
    パキスタン戦闘機「JF17」に輸出交渉が相次ぐ? 200…
  • 7
    人民解放軍を弱体化させてでも...習近平が軍幹部を立…
  • 8
    またTACOった...トランプのグリーンランド武力併合案…
  • 9
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 10
    筋トレ最強の全身運動「アニマルドリル」とは?...「…
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」と「フリース」に移った日
  • 3
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡張に新たな対抗手段
  • 4
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
  • 5
    データが示す、中国の「絶望的な」人口動態...現実味…
  • 6
    ラブロフ、グリーンランドは‌デンマーク​の「自然な…
  • 7
    【銘柄】「古河機械金属」の株価が上昇中...中国のレ…
  • 8
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界…
  • 9
    一人っ子政策後も止まらない人口減少...中国少子化は…
  • 10
    スペースXの宇宙飛行士の帰還が健康問題で前倒しに..…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した──台湾高官が分析
  • 3
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 4
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 5
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【202…
  • 6
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 7
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 8
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 9
    前進するロシア、忍び寄る限界...勝者に見えるプーチ…
  • 10
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中