ニュース速報
ワールド

焦点:トランプ氏、「党団結」は程遠く 予備選連勝も本選に不安

2024年02月27日(火)08時34分

トランプ前大統領は11月の米大統領選に向けた共和党予備選で指名獲得に向けて着実に歩を進めているが、同氏の発言とは裏腹に党内は団結には程遠い状況で、バイデン大統領と本選で対決する場合に必要になり得る有権者の支持を確保できていない。 写真はメリーランド州ナショナルハーバーで24日撮影(2024年 ロイター/Elizabeth Frantz)

(記事の体裁を整えました)

James Oliphant Nathan Layne

[ワシントン 26日 ロイター] - トランプ前大統領は11月の米大統領選に向けた共和党予備選で指名獲得に向けて着実に歩を進めているが、同氏の発言とは裏腹に党内は団結には程遠い状況で、バイデン大統領と本選で対決する場合に必要になり得る有権者の支持を確保できていない。

24日のサウスカロライナ州予備選では、対抗馬のヘイリー元国連大使が予想以上に健闘し、特に伝統的な共和党員や穏健派の支持を集めた。

一部の専門家によると、こうした有権者は移民などを巡るトランプ氏の強硬な政策や人種差別的な発言に嫌悪感をより感じやすいとみられる。複数の刑事訴訟を抱える同氏が有罪となった場合も、一部の有権者が支持を見合わせる可能性がある。

トランプ氏は最近、移民が米国の「血を汚している」と発言。週末には複数の刑事事件で起訴された自身を黒人有権者に重ね合わせ、批判を浴びた。

ヘイリー氏はサウスカロライナ州予備選で約40%の票を獲得。先月のニューハンプシャー州予備選でも得票率が約43%に達した。無党派層のほか、トランプ氏の指名獲得を阻むため共和党予備選に参加した一部の民主党員の支持に支えられた。

ヘイリー氏は多くの共和党員がトランプ氏を拒否しているとし、今後も選挙戦を継続する方針を表明。ヘイリー氏の陣営によると、サウスカロライナ州予備選の敗北後に新たに100万ドルの献金を集めた。

2020年大統領選でトランプ氏に勝利したバイデン氏は、地方の有権者より穏健派が多い郊外地域で白人有権者の支持を集めた。無党派層の支持も54%と、トランプ氏の41%を大幅に上回っており、ミレニアル世代やX世代でもバイデン氏の人気が高い。

こうした有権者がサウスカロライナ州とニューハンプシャー州の予備選でヘイリー氏に投票したが、ヘイリー氏の離脱後にトランプ氏がそれらの層を取り込めるかが問題になる。

共和党のストラテジスト、デーブ・ウィルソン氏は「サウスカロライナ州が全米の縮図だとすれば、他の州でそうした有権者を取り込むため多くのアピールが必要になる」と述べた。

トランプ氏は今のところ、こうした有権者を取り込むため、発言を修正することには関心がないようだ。選挙陣営も問題視していないように見える。

同氏はサウスカロライナ州の予備選後、「共和党がこれほど団結しているのは見たことがない」と発言。選挙陣営もヘイリー氏の得票率について「リベラル民主党員」が支持する候補だと一蹴している。

トランプ氏はここ数カ月、移民・外交政策で保守系支持者が好む強硬姿勢を一貫して打ち出し、予備選で連勝してきた。

だが、本選の有権者は共和党予備選の有権者とは大きく異なる。

ロイター/イプソスの今月の世論調査によると、トランプ氏の支持率は37%で、バイデン氏の34%を上回っているが、22%は「別の候補が望ましい」もしくは「投票しない」と回答。こうした有権者は投票日当日まで態度を決めかねる可能性が高い。

ウィルソン氏は、トランプ氏が世論を二分する好戦的な発言を修正することはできないと指摘。

「ドナルド・トランプにメッセージの修正や自分を変えることを求めるのは、ドナルド・トランプ以外の人物になれということだ。そんなことはしないだろう」と指摘。「ただ、別のスタイルの大統領を求めている別の有権者グループもいる」と述べた。

エジソン・リサーチが実施した出口調査によると、大卒者の間ではトランプ氏よりもヘイリー氏の支持率が高かった。穏健派を自称する有権者の70%はヘイリー氏を支持している。

ウィンスロップ大学のアドルファス・ベルク教授(政治学)は、こうした有権者が21年1月6日の連邦議会議事堂襲撃事件を巡ってトランプ氏を批判する可能性が特に高いとし、「事件を忘れられない穏健派の有権者がいるため、トランプ氏は本選で課題を抱えるだろう」と述べた。

*体裁を整えて再送しました。

ロイター
Copyright (C) 2024 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

オラクル9-11月決算、注目指標が予想に届かず 時

ビジネス

ブラジル中銀、4会合連続で金利据え置き タカ派姿勢

ビジネス

米財政赤字、11月は前年比53%縮小 輸入関税が歳

ビジネス

米金利先物市場、1月据え置き観測高まる 26年に利
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
2025年12月16日号(12/ 9発売)

45年前、「20世紀のアイコン」に銃弾を浴びせた男が日本人ジャーナリストに刑務所で語った動機とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア空軍の専門家。NATO軍のプロフェッショナルな対応と大違い
  • 2
    トランプの面目丸つぶれ...タイ・カンボジアで戦線拡大、そもそもの「停戦合意」の効果にも疑問符
  • 3
    「何これ」「気持ち悪い」ソファの下で繁殖する「謎の物体」の姿にSNS震撼...驚くべき「正体」とは?
  • 4
    死者は900人超、被災者は数百万人...アジア各地を襲…
  • 5
    【クイズ】アジアで唯一...「世界の観光都市ランキン…
  • 6
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 7
    「正直すぎる」「私もそうだった...」初めて牡蠣を食…
  • 8
    「安全装置は全て破壊されていた...」監視役を失った…
  • 9
    イギリスは「監視」、日本は「記録」...防犯カメラの…
  • 10
    「韓国のアマゾン」クーパン、国民の6割相当の大規模情…
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 3
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 4
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 5
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
  • 6
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...…
  • 7
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア…
  • 8
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 9
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%…
  • 10
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 9
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中