ニュース速報
ワールド

焦点:予備選出馬禁止のコロラド州判決、トランプ氏の追い風に

2023年12月21日(木)15時53分

 米コロラド州最高裁判所は12月19日、トランプ前大統領(写真)の支持者が2021年に連邦議会議事堂を襲撃した事件への関与を巡り、来年の大統領選に向け共和党候補を決める州予備選へのトランプ氏の参加を認めない判決を下したが、この判決は共和党候補指名争いでトップを走るトランプ氏の一段の追い風になりそうだ。アイオワ州ウォータールーで同日開かれた選挙集会で撮影(2023年 ロイター/Scott Morgan)

James Oliphant Nandita Bose

[ワシントン 21日 ロイター] - 米コロラド州最高裁判所は19日、トランプ前大統領の支持者が2021年に連邦議会議事堂を襲撃した事件への関与を巡り、来年の大統領選に向け共和党候補を決める州予備選へのトランプ氏の参加を認めない判決を下したが、この判決は共和党候補指名争いでトップを走るトランプ氏の一段の追い風になりそうだ。

州最高裁の判決は「暴動や反乱」に関わった者が官職に就くこと禁じる合衆国憲法修正第14条3項に基づいているが、同項が大統領候補に適用された前例はない。

トランプ氏は判決を不服として連邦最高裁に上訴すると表明。連邦最高裁はトランプ氏が指名した3人を含め保守派の判事が6対3で多数派を占めており、判決が覆される可能性もある。

民主・共和両党の献金者や政治アナリストは、トランプ氏の支持層が今回の判決に反発すると予想。「自分は党派的な法的手続きの犠牲者だ」というトランプ氏の主張に同調する有権者が増え、献金がさらに集まるとの見方を示している。

民主党のバイデン大統領の資金集めを担当するフロリダ州のジョン・モーガン弁護士は「トランプ氏は祝杯を挙げている」とし、共和党にとって資金集めの絶好の機会になると述べた。

トランプ陣営も支持者に対し、献金を通じて「専制的な」判決に対抗するよう呼びかけている。

ロイター/イプソスの最近の世論調査によると、来年の大統領選がトランプ氏とバイデン氏の直接対決となった場合、トランプ氏の支持がバイデン氏を若干上回るとの結果が出ている。

<民主党は無党派層にアピール>

民主党は、今回の判決を受けて、トランプ氏が暴動に関与したと考える無党派層にアピールできる可能性がある。

ロイター/イプソスの今月の世論調査では、無党派層の57%が「トランプ氏が連邦議会占拠を扇動しようとしたと考えられる」と回答。そうとは「考えられない」との回答は30%にとどまった。

共和党支持者の間では約70%が「考えられない」と回答。23%は「考えられる」、残りは「分からない」と答えた。

バイデン大統領は20日、連邦議会襲撃事件について、トランプ前大統領が反乱を支持したことに「疑問の余地はない」と発言。大統領選への出馬資格については裁判所が判断することだが「彼は確かに反乱を支持した。疑問の余地はない。ゼロだ」と断言した。

<共和党対立候補はトランプ氏擁護>

トランプ氏は依然として共和党の指名候補として圧倒的な支持を得ており、コロラド州で出馬を禁止されても、その状況に変わりはないとみられる。コロラド州は民主党が優勢で、トランプ氏が同州で勝利する見込みはない。

共和党候補の指名争いでは、ニッキー・ヘイリー元国連大使への注目度が増しているが、今回の判決を受けてトランプ氏が再び脚光を浴びる可能性がある。

フロリダ州の共和党ストラテジスト、フォード・オコネル氏は、今回の判決について、トランプ氏が政治的な動機に基づく法的手続きの犠牲者であるという長年のシナリオを補強するものであり、態度を決めかねている共和党有権者をトランプ氏支持に傾かせることが考えられるとの見方を示した。

ライバルの共和党候補は、これまでのトランプ氏に対する訴訟と同様、同氏を擁護する姿勢を示している。

ロン・デサンティス・フロリダ州知事は「左派は権力の行使を正当化するため『民主主義』を持ち出す。たとえそれが、偽りの法的根拠に基いて候補者の出馬を禁止する司法権力の乱用であってもだ」とX(旧ツイッター)に投稿。

ヘイリー元国連大使もFOXニュースに「本当に考えられない」と発言。「私は自分の力でドナルド・トランプ氏を打ち負かす。裁判官にトランプ氏の出馬を禁止してもらう必要はない」と述べた。

多くの州がトランプ氏の出馬を禁止するシナリオは考えにくいが、たとえその場合でも、必ずしもバイデン氏に有利に働くわけではない。

一部の世論調査によると、デサンティス氏とヘイリー氏はバイデン大統領に対し有利な選挙戦を展開できるとみられている。

ロイター
Copyright (C) 2023 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

ウクライナ大統領府長官が辞任、和平交渉を主導 汚職

ビジネス

米株式ファンド、6週ぶり売り越し

ビジネス

独インフレ率、11月は前年比2.6%上昇 2月以来

ワールド

外為・株式先物などの取引が再開、CMEで11時間超
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ガザの叫びを聞け
特集:ガザの叫びを聞け
2025年12月 2日号(11/26発売)

「天井なき監獄」を生きるパレスチナ自治区ガザの若者たちが世界に向けて発信した10年の記録

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙すぎた...「心配すべき?」と母親がネットで相談
  • 2
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体を東大教授が解明? 「人類が見るのは初めて」
  • 3
    【クイズ】世界遺産が「最も多い国」はどこ?
  • 4
    【寝耳に水】ヘンリー王子&メーガン妃が「大焦り」…
  • 5
    「攻めの一着すぎ?」 国歌パフォーマンスの「強めコ…
  • 6
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファ…
  • 7
    エプスタイン事件をどうしても隠蔽したいトランプを…
  • 8
    子どもより高齢者を優遇する政府...世代間格差は5倍…
  • 9
    メーガン妃の「お尻」に手を伸ばすヘンリー王子、注…
  • 10
    筋肉の「強さ」は分解から始まる...自重トレーニング…
  • 1
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで墜落事故、浮き彫りになるインド空軍の課題
  • 2
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 3
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネディの孫」の出馬にSNS熱狂、「顔以外も完璧」との声
  • 4
    海外の空港でトイレに入った女性が見た、驚きの「ナ…
  • 5
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
  • 6
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファ…
  • 7
    老後資金は「ためる」より「使う」へ──50代からの後…
  • 8
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 9
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 10
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙す…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 7
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中