インタビュー:デフレ脱却「宣言する状況にない」=公明財金部会長

11月30日、公明党の若松謙維財政・金融部会長はロイターとのインタビューで、政府のデフレ脱却宣言について、千載一遇のチャンスだが現状では宣言する状況にない、との認識を示した。写真は都内で2020年5月撮影(2023年 ロイター/Kim Kyung-Hoon )
Takaya Yamaguchi
[東京 30日 ロイター] - 公明党の若松謙維財政・金融部会長はロイターとのインタビューで、政府のデフレ脱却宣言について、千載一遇のチャンスだが現状では宣言する状況にない、との認識を示した。日銀に対しては現在の金融政策を維持しながら、経済の好循環を支えることに期待感を示した。インタビューは30日に実施した。
若松部会長は、足元の経済環境について「景気は緩やかな回復基調にあることに変わりないが、企業部門の好調さが投資や賃金に必ずしも回っていない」とし、「内需は力強さを欠き、好循環につながっていない」と述べた。
デフレ脱却を巡っては「物価が持続的に下落する状況を脱し、再びそうした状況に戻る見込みがないとするのがデフレ脱却の定義。物価の基調や背景を総合的に考慮し、慎重に判断する必要がある」と指摘した。
30年ぶりの賃上げ率や名目100兆円を超える見込みの設備投資、GDPギャップ解消などの前向きな動きがある一方で、「現時点では賃金上昇が物価上昇に追いついていない。これを放置すれば再びデフレに戻りかねない」と言及。「デフレ脱却宣言に至るには低物価、低賃金、低成長のコストカット型経済から持続的な賃上げや活発な投資がけん引する成長型経済への変革が必要になってくる。現状では宣言する状況にはない」と語った。
拙速なデフレ脱却宣言に踏み切れば「誤ったメッセージを市場に送り、好循環どころか空回りする可能性がある」との考えも述べた。
日銀の金融政策に関しては「いまの状況を考えるとYCC(イールドカーブ・コントロール)の枠組みとマイナス金利は維持すべきだ。次の一手をどうするかを打ち出す状況にはない」とした。
政府・日銀が連携する中で「賃上げを伴う物価安定2%目標の実現と、持続的な経済成長を目指して、日銀としての役割を果たしていただきたい」との期待感も示した。2013年1月以降、維持されている政府・日銀のアコード(政策協定)については「当面、見直す必要はない」と明言した。