IMF、25年世界成長率予測を小幅上方修正 関税リスク残ると警告

国際通貨基金(IMF)は29日に公表した最新の「世界経済見通し」で、2025年と26年の世界経済成長率予測を若干上方修正した。香港で2023年撮影(2025年 ロイター/Tyrone Siu/File Photo)
Andrea Shalal
[29日 ロイター] - 国際通貨基金(IMF)は29日に公表した最新の「世界経済見通し」で、2025年と26年の世界経済成長率予測を若干上方修正した。8月1日の米関税発動期限を前に、予想を上回る購入が見られたことや、米国の実効関税率が24.4%から17.3%に低下したことを反映した。
ただ、関税率が再び上昇する可能性や地政学的緊張、財政赤字拡大など、金利が上昇して世界的な金融状況の引き締めにつながりかねない大きなリスクが依然あると警告した。
IMFのチーフエコノミスト、ピエール・オリビエ・グランシャ氏は「世界経済は依然として打撃を受けている。さらに悪い状況になっていた可能性があるものの、この水準の関税では今後も厳しい状況が続くだろう」と述べた。
IMFは25年の世界成長率予測を0.2%ポイント引き上げて3.0%、26年は0.1%ポイント引き上げて3.1%としたが、1月時点の予測(両年とも3.3%)や、パンデミック前の歴史的平均の3.7%を下回る。
世界の総合インフレ率は25年に4.2%、26年に3.6%に低下すると予想。その上で、米国では今年後半に関税コストを消費者に転嫁する動きから、インフレ率が目標を上回る状況が続く見通しだと指摘した。
米国の実効関税率(関税収入を輸入額で割って算出)は4月以降低下しているものの、1月初旬の推定値である2.5%をはるかに上回っている。世界のその他の地域の実効関税率は3.5%。4月時点では4.1%だった。
トランプ米大統領は4月からほぼ全ての国に10%の一律関税を課し、8月1日にはさらに関税を引き上げると警告している。中国に対する関税は185%まで上昇したが、現在は55%となっている。
米国はまた、自動車や鉄鋼などの金属に対して25─50%の関税を課すと発表しており、医薬品、木材、半導体にも、より高い関税の適用を検討している。
IMFは、こうした将来の関税引き上げはIMFの予測に反映されていないとし、実効関税率をさらに押し上げ、ボトルネックを生じさせて、関税による影響悪化につながる可能性があると指摘した。
<関税の変更>
米国が欧州連合(EU)および日本と今月結んだ新たな貿易協定は今回の予測に織り込まれていない。前出のグランシャ氏は、米国が最近締結したこれらの貿易協定について、内容を注意深く検討してその経済的影響を検証していると言及。これまで発表された貿易協定は枠組みでの合意であり、具体化する必要があるとの見方を示した。
また「これらのディール(取引)が維持されるのか、解消されるのか、他の変更が加えられるのか注視する必要がある」と指摘。その上で、これら協定でこれまで合意に達した関税率は、IMFが公表した最新の「世界経済見通し」で示した米国の実効関税率に近いとの考えも示した。
IMFによると、スタッフによるシミュレーションでは、4月と7月に発表された最大関税率が実施された場合、25年の世界経済成長率は約0.2%ポイント下振れすることが示された。
グランシャ氏は、関税を見越した企業による購入前倒しが今年の見通しを支援したが、こうした在庫積み増し効果は持続しないと指摘。効果は徐々に消え、今年後半から26年にかけて経済活動の足かせになるだろうとし、「前倒しの反動がリスクの一つだ」と述べた。
米国の成長率予測は25年が1.9%と、4月時点から0.1%ポイント引き上げた。26年は2%に上昇すると予想した。米国では新たな減税・歳出法により、財政赤字が1.5%増加する見込みとした上で、関税収入がその約半分を相殺するとの見通しを示した。
ユーロ圏の25年成長率予測は0.2%ポイント引き上げ、1.0%とした。一方、26年の予測は1.2%で据え置いた。上方修正はアイルランドの米国向け医薬品輸出の歴史的な急増を反映したもので、これがなければ、修正幅は半分になっていたという。
中国の25年成長率予測は0.8%ポイント上方修正。今年前半の経済活動が予想以上に好調だったことと、米中貿易戦争休止を受けた大幅な関税引き下げを反映した。26年は0.2%ポイント引き上げて4.2%とした。