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ECB理事会後のラガルド総裁発言要旨

2025年07月25日(金)00時10分

欧州中央銀行(ECB)は24日、8会合ぶりに政策金利を据え置いた。写真は6月撮影のラガルド総裁(2025年 ロイター/Heiko Becker)

[フランクフルト 24日 ロイター] - 欧州中央銀行(ECB)は24日、8会合ぶりに政策金利を据え置いた。据え置きは市場の予想通り。過去1年で8回利下げし、中銀預金金利は4%から2%に引き下げた。

理事会後のラガルド総裁の記者会見での発言は以下の通り。

<様子見姿勢>

われわれは金利を据え置き、足元は様子見の状況にあると言えるだろう。今後の金融政策決定はデータに基づき、会合ごとに決定される。特定の道筋によって事前に決められるものではない。不確実性がどれだけ早く解消されるかは、現状ではまだ分からない。

不確実性の大部分は、貿易や関税措置、非関税障壁に起因するが、不確実性自体も、われわれが目にしているリスクのレベルに影響を与える。不確実性は、関税や非関税障壁に対する懸念や予想によって引き起こされる貿易に絡むもので、最終的な結果を巡る全体的な不確実性が、消費者と投資家の行動に明らかに異なる影響を与えている。

<貿易の「報復は任意的」>

興味深い交渉の様子や、さまざまな形で流れてくる情報を見ていると、報復措置は確定的な要素ではなく、任意的な選択であるように思える。ただ、インフレもしくはデフレの影響を及ぼすかについては現時点では判断できない。

単なる「一方向の貿易と、それに対する報復措置」だけではなく、サプライチェーン(供給網)の方向転換、混乱、ボトルネックなど、さまざまな要素が相まって価格に影響を与える。われわれが次に自問すべき質問は「これはレベル効果なのか、それとも新たなパラダイムによる継続的な結果なのか」だ。そこには多くの不確実性が存在する。

<インフレ目標の未達について>

インフレ目標が達成されていないことを大きく懸念している理事会メンバーが常に2、3人いる。ただ、重要なのは中期目標だ。われわれはこの目標を再確認しており、(目標水準は)間違いなく2%だ。インフレ期待は短期的にも長期的にも、2%近辺でしっかりと抑制されている。

<欧州連合(EU)と米国の貿易交渉について>

交渉の行方を注視している。今回の理事会での決定の根拠となるベースラインは6月時点のものだ。そのベースラインは維持されており、最近の全てのデータでおおむね確認されている。

われわれは会合ごとに決定を下すが、日々の状況を見極めている。貿易を巡る不確実性が早期に解決されれば、対処しなければならない不確実性は軽減する。

<経済成長に対するリスク>

経済成長に対するリスクは依然として下向きに傾いている。主なリスクとして、世界的な貿易摩擦の一段の高まりと、それに伴う不確実性が挙げられる。こうした要因により、輸出が抑制され、投資と消費が圧迫される可能性がある。金融市場のセンチメントが悪化すれば資金調達環境がひっ迫すると同時に、リスク回避が強まり、企業や家計の投資、消費意欲が低下する可能性がある。

ロシアによるウクライナに対する不当な戦争のほか、中東の悲惨な紛争といった地政学的緊張は依然として大きな不確実性の源になっている。

ただ、貿易摩擦と地政学的な緊張が迅速に解決されれば、センチメントが改善し、経済活動が刺激される可能性がある。防衛費とインフラ投資の増加のほか、生産性向上のための改革で経済成長が後押しされる可能性がある。企業の信頼感が改善すれば民間投資も刺激される。

<インフレ見通し>

世界的な貿易政策環境の不安定さにより、インフレ見通しは例年よりも不透明となっている。ユーロの上昇が予想以上にインフレを押し下げる可能性がある。また、関税引き上げによって、ユーロ圏の輸出への需要が減退し、過剰生産能力を抱える国が輸出先をユーロ圏にシフトさせれば、インフレはさらに低下する可能性もあります。

<基調インフレ>

基調的なインフレ指標は総じてわれわれの中期目標である2%と一致している。

<関税の影響>

関税の実質的および予想される上昇、ユーロ上昇、そして地政学的な不確実性の継続により、企業は投資に一層消極的になっている。

ロイター
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