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アングル:「昨夏と違う」株高、日経最高値も視野 物色拡大で粘り腰に期待

2025年07月24日(木)18時52分

 7月24日、日経平均は節目の4万2000円を上回り、昨夏に記録した過去最高値を視界に捉えた。市都内の株価ボード前で23日撮影(2025年 ロイター/Kim Kyung-Hoon)

Noriyuki Hirata

[東京 24日 ロイター] - 日経平均は節目の4万2000円を上回り、昨夏に記録した過去最高値を視界に捉えた。高値更新後に株安となった昨夏の記憶は新しいが、半導体関連株が主導した去年とは異なり、今年は物色先が分散している。TOPIXはすでに史上最高値を更新し、日本株は粘り腰が期待できるとの声もある。

<外れた「重し」>

日経平均の急上昇は、これまで上値を抑えていた「重し」が外れたためだと、いちよしアセットマネジメントの秋野充成社長は指摘する。重しとは、米関税と参院選の2大不透明要因だ。前日には日米の関税合意が伝わったほか、連休中には参院選を通過し、与党の敗北は想定の範囲にとどまった。 

米S&P500の年初からの上昇率は7.6%、ナスダック総合は7.8%となっており、日経平均の3.2%、TOPIXの5.0%は出遅れている。重しが外れた日本株が米国株にキャッチアップする動きになるのは「必然」と秋野氏はみている。

米国では経済が底堅い一方、利下げ期待が継続する「ゴルディロックス(適温相場)」の状態にあり、株高基調が継続している。「ゴルディロックスシナリオが崩れない限り、米株はなかなか下がらないのではないか」と秋野氏はみており、日本株もつれ高しやすいという。

<物色分散がもたらす「粘り腰」への期待> 

過去2年は6─7月に高値を更新した後、調整局面を迎えた経緯がある。とりわけ昨年は7月の高値更新から1カ月足らずで1万円超下落する場面があり、今回の株高も調整局面が控えているのではないかとの警戒感もくすぶっている。 

日経平均の株価収益率(PER)は23日時点で16.3倍だった。過去数年のレンジが14―16倍とされるところ、レンジの上限付近にあり「上値余地は乏しくみえる」と、みずほ証券の中村克彦マーケットストラテジストは指摘する。 

一方、「買えていない投資家は多い。下値では買い需要が見込まれ、大きく崩れるとは思わない」と岡三証券の松本史雄チーフストラテジストはみている。今年は「粘り腰が期待できるのではないか」(いちよしAMの秋野氏)との見方もある。 

昨夏にかけての株高局面では、日経平均への寄与度でファーストリテイリングに次いで高かった東京エレクトロンなど半導体関連株の急騰が指数を押し上げた。東エレクの日経平均のウエート(構成比率)は一時約10%に高まり、急落時には下げも主導することになった。それが足元では6%台に低下し、指数へのインパクトも低下している。 

足元で物色に広がりがみられることで、半導体株「一本足」の上昇だった昨夏に比べると株価の耐久性が高まっているとみられている。 

春先以降、米関税への警戒で外需株が買いにくくなる中、ゲームなどのコンテンツ株や防衛関連、DX(デジタルトランスフォーメーション)といった、関税の影響が少ない分野に物色が向かった。そこに、半導体関連株の見直し買いが入り、今度は自動車株や銀行株に買いが広がったことで、物色の偏りが修正されてきた。 

<中小型株に買い>

大型株と中小型株の物色傾向も変わった。去年は高値までの上昇局面では中型株のTOPIXミッド400が15%高、小型株のTOPIXスモールが14%高だったのに対し、大型株のTOPIX100が29%高と大型株の上昇が目立った。今年はこれまでに、大型株の5%高に対し、中小型はそれぞれ約9%高となっており、中小型株にも物色が広がっている様子がうかがえる。 

もっとも、一段の上昇には、商いを伴う必要があるとの見方は有力だ。「売買代金が尻すぼみにならないか目配りが必要」とみずほの中村氏は指摘する。日米合意のあった前日の東証プライム市場の売買代金は7.1兆円と膨らんだが、きょうは5.7兆円に縮小した。

まだ高水準ではあるものの、さらに尻すぼみになっていくようなら上昇力は減衰しかねない。その場合「結局、3万1000円─4万2000円の大きなレンジ相場の中だった、ということになるかもしれない」と中村氏は話している。

ロイター
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