アングル:参院選後もくすぶる金利高・円安懸念、関税期限控え再緊張も

7月22日、参院選を経た連休明けの東京市場では、日経平均が急上昇して始まった後、マイナスに転じるなど不安定な値動きとなった。都内で同日撮影(2025年 ロイター/Issei Kato)
Noriyuki Hirata
[東京 22日 ロイター] - 参院選を経た連休明けの東京市場では、日経平均が急上昇して始まった後、マイナスに転じるなど不安定な値動きとなった。選挙前に観測された政局への過度な警戒感は後退したものの、払拭されてはおらず、今後もぶり返すリスクはくすぶっている。
<急激な変化はない>
参院選で与党は事前の情勢調査で示されたように過半数割れとなったが、石破茂首相が続投の意向を示したことで、株式市場では「すぐには急激な変化はないとの見方から、買い戻しが先行した」(しんきんアセットマネジメント投信の藤原直樹シニアファンド・マネージャー)という。
投開票前に債券市場では「悪い金利上昇」、為替市場では「悪い円安」が警戒され、株価は上値が抑えられていた。与党の苦戦が伝わり、減税など財政拡張的な野党の政策が実現したり、自民党総裁が交代して財政拡張的な政策へ傾斜することで、国債が増発されるとの思惑が背景にあった。
米S&P500やナスダック総合が高値圏にあるのに対し、日本株は出遅れており「割安感がある。投資家は、きっかけがあれば上を見たいと思っており、今朝の動きはそれらしい動きだった」(岩井コスモ証券の林卓郎投資情報センター長)とみられている。
日米の関税交渉期限を8月1日に控え、市場では、国内政局によって交渉が停滞しかねないとの警戒感もあったが、赤沢亮正経済再生担当相は参院選の直後から渡米しており、交渉継続への思惑をつないだとの見方もあった。「選挙を通過したことで、より切れるカードが増えたはずだ」と三井住友トラスト・アセットマネジメントの上野裕之チーフストラテジストはみている。
<「悪い金利上昇」懸念は払拭されず>
もっとも、市場では「悪い金利上昇」「悪い円安」への警戒感は払拭されていない。22日の長期金利は低下したが、超長期金利は上昇し、ドル/円も円高は一服した。日経平均は朝高後に利益確定売りに押され、午後にはマイナスへと転じた。
市場が最も懸念するのはまず政権運営の不透明感だ。政権の弱体化で野党の協力を仰がざるを得ない中で改めて金利上昇、円安が意識される可能性がある。参院選後の円高は、事前に円売りを仕掛けていた海外投機筋の買い戻しが中心と外為どっとコム総合研究所の神田卓也調査部長はみている。野党の協力を仰がざるを得ない中では「減税の可能性が高まっているようにみえ、改めて円が売られる可能性はあるだろう」との見方を示す。
石破首相に対しては野党だけでなく与党からも責任を取るべきとの声が出ており、31日に予定される党の両院議員懇談会などを得て退陣の流れとなれば政局が混迷し、翌日に期限を控える日米関税交渉への影響も警戒される。
石破首相が退陣した場合、さらに金利上昇と円安が意識される可能性がある。野党の躍進を受け、与党も景気対策を意識せざるを得ないと市場ではみられている。例えば景気刺激策に積極的な高市早苗氏が後継となれば、株高が促される可能性がある一方、財政懸念が強まりかねないとの見方もある。
一方、比例代表の得票数で参政党に及ばなかった立憲民主党に内閣不信任案は出せないとの見立ても聞かれる。消費減税を食品に限る立憲との連携なら、一律の減税を主張する国民民主と組むより、財政への影響がより抑えられるとの思惑がある。国民民主も、今の賃上げ水準が続けば消費減税は必ずしも必要ないとの発信をしている。いわゆる「103万円の壁」問題で与党が譲歩すれば、財政懸念は抑えられるとの見方もある。
格付け会社のムーディズは22日、消費減税の国債格付けへの影響は、減税の範囲と規模、持続性次第とする一方、与党は消費税率の大幅な変更を阻止できる「十分に強い」立場を維持したとの見方を示している。
月末から月初にかけ、両院懇談会や米関税の猶予期限などを相次いで迎えることになり「目先はボラティリティーが高まるかもしれない」としんきんAMの藤原氏は話している。