情報BOX:中国のレアアース輸出規制、実効性もたらした業界統制策

7月7日、中国が2010年、外交的な対立を背景に日本へのレアアース(希土類)輸出制限に乗り出した際には、中国国内のレアアース産業が「野放し状態」だったために密輸が横行し、政府の規制措置を台無しにした。写真は2010年10月、内モンゴルの工場で、ランタンを鋳型に流し込む作業員(2025年 ロイター/David Gray)
[7日 ロイター] - 中国が2010年、外交的な対立を背景に日本へのレアアース(希土類)輸出制限に乗り出した際には、中国国内のレアアース産業が「野放し状態」だったために密輸が横行し、政府の規制措置を台無しにした。
しかし今年4月、中国が新たなレアアース輸出規制に踏み切ると、わずか2カ月で世界の自動車メーカーが供給不足に見舞われて一部は生産停止に追い込まれ、中国政府の国内業界に対する統制が極めて厳格化したことが浮き彫りになった。
中国政府は、かつて全く監督体制が整備されていなかったレアアース業界を、再編と生産割当制度という手段を通じて強力な外交上の武器に仕立てることに成功した。
業界統制がいかにして強化されたのか、その道のりをまとめた。
<再編>
中国政府がレアアース業界への締め付けを開始した約15年前は、採掘や加工に従事する事業者が数百社も存在した。これが13年になると、ほぼ全ての鉱山を10の生産事業者が支配する構図となり、現在は中国希土集団、中国北方希土(集団)高科技という国有大手2社に集約された。
米西部アイダホ州のボイシ州立大学で客員教授を務めるデービッド・エイブラハム氏によると、10年強にわたる再編で中国政府の監督権限が拡大し、違法な採掘に起因する環境汚染も抑制されているという。
かつては違法に採掘されたレアアースが無認可の分離工場に送られ、最終製品として国外に密輸される闇のサプライチェーン(供給網)があった。14年に国外へ密輸されたレアアース酸化物は推定約4万トンと、公式の輸出量の半分に上っていた。
磁石メーカーは、上流の採掘や精製分野と同じような形で再編されたわけではなく、中国全土ではなお数十の事業者が活動している。
ただ中国政府は6月からレアアース磁石業界に追跡システムを採用し、各企業は顧客や取引量の詳しい情報の提供が義務付けられた。最終的な狙いは、政府がレアアースに関する全サプライチェーンを把握することだ。
<生産割当>
再編とともに中国政府は06年から生産割当制度を導入して供給管理に役立てている。
生産・精錬・分離で各社に割り当てられる生産枠は通常毎年2回発表され、世界的な供給の指標として幅広い関係者が注視している。
中国政府は昨年、この生産枠を付与する企業をそれまでの6社から国有2社に絞り込んだ。昨年の生産枠総量の伸びは前年比5.9%と、23年の21.4%から急激に鈍化した。
アナリストやトレーダーによると、今年の伸びは横ばいか5%程度にとどまる見通しだ。
中国政府はレアアース関連技術の輸出も制限している。採掘や分離の機器やノウハウは長年輸出が禁じられてきたが、23年終盤にはレアアース磁石の製造に使われる技術も禁止対象になった。