ニュース速報
ビジネス

焦点:FRBは慎重姿勢、関税リスク巡る市場の不安消えず

2025年06月19日(木)14時31分

 6月18日、米連邦準備理事会(FRB)が慎重姿勢を示し、利下げへの期待に水を差した。写真はスクリーンに映るパウエルFRB議長。同日、ニューヨーク証券取引所で撮影(2025年 ロイター/Brendan McDermid)

[ニューヨーク 18日 ロイター] - 米連邦準備理事会(FRB)が慎重姿勢を示し、利下げへの期待に水を差した。投資家は地政学的緊張やインフレリスク、トランプ大統領の関税措置による経済への影響など不透明要素が交錯する中、神経をとがらせている。

FRBは17─18日に開いた連邦公開市場委員会(FOMC)でフェデラルファンド(FF)金利の誘導目標を予想通り4.25─4.50%に据え置いた。政策当局者らは年内に金利がある程度引き下げられる見通しを再確認したものの、トランプ政権の関税計画を巡る不確実性からインフレが上昇する可能性があるため、今後の全体的な利下げペースについては鈍化する可能性を示唆した。

BNYの市場ストラテジスト主任のボブ・サベージ氏は「FRBが落ち着いていることは、投資家にとって安心材料になるはずだが、一方で、今後発表される全てのデータに対する不確実性も反映している」と述べた。

FRBは今年のインフレ見通しを若干修正し、3月時点の2.7%から3%に引き上げた。一方、今年の経済成長率見通しは1.7%から1.4%に下方修正した。

5月のコアインフレ率が軟調となり、幾分の安心感を市場に与えていたものの、FRBの経済見通し引き下げに加え、中東危機の深刻化やそれによるエネルギー価格上昇の可能性が影を落としている。

フィデューシエント・アドバイザーズのブラッド・ロング最高投資責任者(CIO)は「インフレ率がゼロかマイナスに落ち込むという材料はあまり出ていない。リスクは上向きで、FRBもそれを認識している」と語った。

パウエル議長は記者会見で、 トランプ政権の関税の影響について「モノのインフレが幾分上昇した」とし、「夏にかけて一層表れる」という見通しを示した。

最新の金利・経済見通しによると、3月および昨年12月と同様に、年末までに計0.5%ポイントの利下げが実施されるとの中央値が示された。しかし、年内の利下げは不要との見方を示した当局者は3月に比べて増加した。来年と2027年はそれぞれ0.25%ポイントの利下げを予想し、緩和ペース鈍化の可能性を示唆した。

PGIMフィクスト・インカムのチーフ投資ストラテジスト、ロバート・ティップ氏は、結果はタカ派的だったと指摘。「FRBはインフレに焦点を絞っている。成長の多少の弱さは容認するつもりだ」と語った。

<夏に物価上昇>

トランプ大統領はFRBに利下げを繰り返し要求しているが、パウエル議長はサプライチェーン全体の企業が関税をどのように吸収するか苦慮する中、新たなコスト上昇圧力が近く見込まれると警告した。

一方、トランプ大統領は先週、米国の高関税の発動前に各国との貿易交渉を完了させる期限を現行の7月8日から延長しても構わないと述べた。

RBCキャピタル・マーケッツの米国金利戦略責任者、ブレイク・グウィン氏は、7月の関税期限が依然として市場にとって重要だと指摘。「リスクイベントについて考えると、これは今後かなり大きな問題になる」との見方を示した。

グレンミードの投資戦略担当副社長、マイケル・レイノルズ氏は、投資家にとって今後数カ月のインフレデータが極めて重要になるとし、「それらが伝える総合的な状況は、利下げや利下げ期待を背景にリスクオン相場の上昇がさらに進むのか、それとも依然として不確実性の中で様子見が続くのかを見極める上で有益となる」と語った。

ロイター
Copyright (C) 2025 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

台湾中銀、政策金利据え置き 予想通り

ワールド

米民主党、支持者6割が指導部交代望む 「経済に焦点

ビジネス

国債発行修正案の報道で金利低下、出尽くし感も 需給

ワールド

日韓国交正常化60年で式典、石破首相「厳しい戦略環
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:コメ高騰の真犯人
特集:コメ高騰の真犯人
2025年6月24日号(6/17発売)

なぜ米価は突然上がり、これからどうなるのか? コメ高騰の原因と「犯人」を探る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「うちの赤ちゃんは一人じゃない」母親がカメラ越しに見た「守り神」の正体
  • 2
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事故...「緊迫の救護シーン」を警官が記録
  • 3
    「アメリカにディズニー旅行」は夢のまた夢?...ディズニー・ワールドで1日遊ぶための費用が「高すぎる」と話題に
  • 4
    イタリアにある欧州最大の活火山が10年ぶりの大噴火.…
  • 5
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 6
    下品すぎる...法廷に現れた「胸元に視線集中」の過激…
  • 7
    マスクが「時代遅れ」と呼んだ有人戦闘機F-35は、イ…
  • 8
    ホルムズ海峡の封鎖は「自殺行為」?...イラン・イス…
  • 9
    【クイズ】「熱中症」は英語で何という?
  • 10
    ロシア人にとっての「最大の敵国」、意外な1位は? …
  • 1
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロットが指摘する、墜落したインド航空機の問題点
  • 2
    「うちの赤ちゃんは一人じゃない」母親がカメラ越しに見た「守り神」の正体
  • 3
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高にかっこいい」とネット絶賛 どんなヘアスタイルに?
  • 4
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 5
    大阪万博は特に外国人の評判が最悪...「デジタル化未…
  • 6
    「タンパク質」より「食物繊維」がなぜ重要なのか?.…
  • 7
    右肩の痛みが告げた「ステージ4」からの生還...「生…
  • 8
    イタリアにある欧州最大の活火山が10年ぶりの大噴火.…
  • 9
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 10
    サイコパスの顔ほど「魅力的に見える」?...騙されず…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊の瞬間を捉えた「恐怖の映像」に広がる波紋
  • 3
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 4
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 5
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 6
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 7
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 8
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 9
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
  • 10
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中