再送-〔アングル〕超長期金利に低下圧力、財務省対応で思惑 需給不安解消は不透明

6月10日、超長期金利の急上昇を招いた国債市場の需給悪化を食い止めようと、財務省が対策に乗り出すとの観測が浮上している。写真は円紙幣。2011年8月、都内で撮影(2025年 ロイター/Yuriko Nakao)
(この記事は10日午後6時40分に配信しました)
Tomo Uetake
[東京 10日 ロイター] - 超長期金利の急上昇を招いた国債市場の需給悪化を食い止めようと、財務省が対策に乗り出すとの観測が浮上している。国債市場に思惑が広がり、10日の超長期金利も一時、大幅に低下した。ただ、対策が実現するかは不透明で仮に実現したとしても、参院選に向け与野党から減税や現金給付を訴える声が高まる中、財政拡張への懸念はくすぶる。超長期債の需給問題が解消するかは依然、不透明との指摘は根強い。
<市場が読み取る財務省の「本気度」>
先月20日、財務省が実施した20年利付国債入札が「記録的な不調」に終わったことをきっかけに、超長期金利が軒並み過去最高水準に急上昇するなど、超長期債相場は乱調となった。市場では財務省や日銀による「公的サポート」を求める声が上がっていた。
こうした中、ロイターが同27日、財務省が6月中下旬に国債市場特別参加者会合(PD懇)を開催し、超長期債の減額も視野に25年度の国債発行計画の年限構成を再検討するなどと報じた。債券市場では、早ければ7月から超長期国債の発行が減額されるとの期待が広がり、超長期金利上昇にブレーキがかかった。
さらに今月9日、ロイターは、25年度国債発行計画の見直しでは、超長期国債の新規発行減額に加え、過去に発行した低利率の国債を買入消却(バイバック)する案が浮上していると報じた。 これが超長期債の買い材料となり、30年金利は5月21日につけた過去最高水準の3.185%から、わずか3週間で2.860%へと30ベーシスポイント(bp)超低下した。
大和証券の川原竜馬シニアストラテジストは報道を受け「財務省が新発減額を超えた包括的な対策に踏み出すことの意義は大きい。年度途中での発行計画見直しに続く異例の対応は、財務省の危機感と本気度を改めて示すものだ」と評価。「超長期債市場は新たな安定化局面に入る可能性がある」として、今月20日と23日に見込まれる市場参加者との会合での議論に注目する考えを示した。
<入れ替え進める生保は歓迎、くすぶる財政懸念>
住友生命保険ALM証券運用部の資金債券運用室長、大原悟司氏は「買入消却については、市場参加者の一部から要望はあったが総意とはなっておらず、(報道は)ポジティブサプライズ」との受け止めを示す。
25年度導入の健全性規制への対応のための超長期債買いが一巡した生保各社は足もと、過去に買った低利回りの既発債を売って高利回りの新発債を買う「入れ替え」を進めている。そうした取引を通じて流通市場では既発債(オフザラン銘柄)の在庫が積み上がり、超長期債全体の需給悪化と金利上昇を引き起こしていた側面があると大原氏はみている。
その上で、超長期の新発債減額と併せて既発債の買入消却を実施すれば、需給の調整と市場の安定に寄与するだろう、という。
ただ、市場では財政懸念がくすぶっている。参院選を控え、各党からは減税や給付などポピュリズム的な政策を掲げる動きが強まっているためだ。
超長期債市場では生保など長期保有の買い手の存在が縮小傾向にある一方、「足の速い」外国人の存在感が増している。住友生命の大原氏は「市場はこれまで以上に財政関連のニュースフローに敏感に反応しやすく、財政懸念が金利にダイレクトに反映されやすくなっている」と指摘。再び超長期債が売られて金利が上昇する可能性もあるとしている。
(植竹知子 編集:平田紀之、石田仁志)