ニュース速報
ビジネス

英賃金、第4四半期に伸び加速 3月利下げ観測後退

2025年02月18日(火)21時40分

2月18日、英国立統計局(ONS)が発表した統計によると、英国の賃金は2024年第4・四半期に伸びが加速した。ロンドンで2023年10月撮影(2025年 ロイター/ Susannah Ireland)

William Schomberg Andy Bruce

[ロンドン 18日 ロイター] - 英国立統計局(ONS)が18日発表した統計によると、英国の賃金は2024年第4・四半期に伸びが加速した。景気低迷にもかかわらず、イングランド銀行(英中央銀行)が追加利下げを慎重に見極めようとしている要因が改めて鮮明になった。

24年10─12月の民間部門の賃金(除くボーナス)は前年比6.2%上昇。9─11月(5.9%上昇)を上回り、1年ぶりの高い伸びとなった。

経済全体の賃金(除くボーナス)は前年比5.9%上昇で、昨年2─4月以来の高い伸び。ボーナスを含めたベースでは6.0%上昇。ロイターがまとめたエコノミスト予想はいずれも5.9%上昇だった。

賃金上昇率は英中銀のインフレ目標2%を大きく上回っている。英中銀は今月、第4・四半期の民間部門賃金の伸び率を6.3%と予想した。中銀チーフエコノミストのピル氏は先週、ロイターのインタビューで、英経済の重荷となっている主な問題は、賃金を押し上げている労働者不足などの供給の問題と指摘した。

イングランド銀行(英中央銀行)のベイリー総裁は今回の統計について、景気への大まかな見通しを変えるものではないと指摘。今月初めに予想した賃金上昇を若干下回ったと述べた。

英国勅許会計士協会(ICAEW)の経済ディレクター、スレン・シル氏は、統計を受け、英中銀の3月利下げはないとの見方を示した。その一方で「景気低迷、労働市場の緩み、4月からの企業コスト上昇が下押し圧力となり、現行の賃金の伸び加速は短命に終わるだろう」と指摘した。

JPモルガンのエコノミスト、アラン・モンクス氏は、今回のデータによって景気後退リスクはある程度軽減されたものの、英国の基調的な物価上昇圧力が「粘着性」を持っているという問題が浮き彫りになり、英中銀は利下げに迅速に踏み切れないと指摘。「英中銀は緩和を続けるものの、しばらくは緩やかな緩和にとどまるとの見方を強めるだろう」と話した。

4月から国民保険料の企業負担率が上がる。17日公表の調査によると、これに対応し人員削減を予定すると回答した雇用主が3割を占めた。

INGのエコノミスト、ジェームズ・スミス氏は「人員削減の水準は低いが、春の増税を前にそれが変わり始めることが大きなリスクだ。雇用市場が冷え込めば賃金上昇率は徐々に低下するはずだ」と語った。

失業率は4.4%で9─11月から変わらずだった。

11─1月の求人件数は8─10月を9000件下回った。

税務当局のデータに基づく1月の被雇用者数は前月比2万1000人増加。増加は過去8カ月で3回目。

ロイター
Copyright (C) 2025 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、選挙での共和党不振「政府閉鎖が一因」

ワールド

プーチン氏、核実験再開の提案起草を指示 トランプ氏

ビジネス

米ADP民間雇用、10月は4.2万人増 大幅に回復

ワールド

UPS貨物機墜落事故、死者9人に 空港は一部除き再
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 2
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 3
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面に ロシア軍が8倍の主力部隊を投入
  • 4
    もはや大卒に何の意味が? 借金して大学を出ても「商…
  • 5
    カナダ、インドからの留学申請74%を却下...大幅上昇…
  • 6
    「白人に見えない」と言われ続けた白人女性...外見と…
  • 7
    若いホホジロザメを捕食する「シャークハンター」シ…
  • 8
    NY市長に「社会主義」候補当選、マムダニ・ショック…
  • 9
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 10
    「なんだコイツ!」網戸の工事中に「まさかの巨大生…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 3
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 4
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 5
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 6
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った…
  • 7
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 8
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 9
    女性の後を毎晩つけてくるストーカー...1週間後、雨…
  • 10
    だまされやすい詐欺メールTOP3を専門家が解説
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 7
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 10
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中