ニュース速報
ビジネス

ECB、金利据え置き 声明で利下げ示唆

2024年04月12日(金)03時15分

欧州中央銀行(ECB)は11日、主要政策金利を予想通り据え置いた上で、近く利下げに踏み切る可能性を示唆した。2023年3月撮影(2024年 ロイター/Heiko Becker)

Balazs Koranyi Francesco Canepa

[フランクフルト 11日 ロイター] - 欧州中央銀行(ECB)は11日、主要政策金利を予想通り据え置いた上で、声明に新たな文言を盛り込み、近く利下げに踏み切る可能性を示唆した。

中銀預金金利を過去最高の4.0%に据え置いた。

ECBは声明で「インフレ見通し、基調的インフレの動き、金融政策の伝達の強さに関する理事会の最新の評価が、インフレが持続的に目標に収れんしているとの確信をさらに強めるものであれば、現在の金融政策の制約レベルを下げることが適切になる」と述べた。           

入手した情報はおおむね前回のインフレ評価を確認する内容で、賃金の伸びは緩やかになり、企業は人件費上昇を収益性で一部吸収しているとした。ただ域内の物価圧力は強く、サービス価格インフレを高止まりさせていると指摘した。

ECBは昨年9月以降金利を据え置いているが、利下げが視野に入っていることを以前から示唆。今回の声明で新たな文言を用いてそのメッセージを強調した格好となる。

<6月利下げ示唆>

ラガルドECB総裁は理事会後の記者会見で、新たな検証によってインフレが目標に回帰しつつあるとのECB当局者の確信が強まれば、金利を引き下げることが「適切」になると述べた。

こうした発言は6月6月の理事会での政策決定を肯定するものと受け止められている。コメルツバンクのエコノミスト、イェルク・クレーマー氏は「ECBは事実上、6月の利下げを発表した」と指摘。「多くのことが起きない限り、6月の利下げは阻止されない」とした。

ラガルド氏は理事会の「ほんの数人」のメンバーが政策を緩和すべき時期が来たと考えていたものの、待つことで合意したと言及。ECBは今後より多くの情報を入手し、6月に新たなインフレ・経済成長予測を発表すると述べた。

物価情勢については、中東情勢の緊張により原油価格が6カ月ぶりの高値である1バレル=90ドル近辺に上昇したことを受け、ECBは原油先物の動向を注視していると言及。ただ、ユーロ圏のインフレ率は来年半ばまでに目標の2%に戻るとの見通しを改めて確認した。

今回のECB理事会を受け、短期金融市場が見込む6月に0.25%ポイントの利下げが行われる確率は約70%と、約80%から低下。ただ、ラガルド総裁は「特定の金利の道筋を事前に確約しているしているわけではない」と強調した。

一部アナリストは、ECBは必要に応じて6月の理事会で金利据え置きを決定する余地を残したと指摘。同時に、将来的な利下げペースがより大きく注目されているとした。

<米金融政策を注視>

ラガルド総裁は、米経済の動向が政策決定に関連しているとの認識を示しながらも、ユーロ圏の状況は異なるとも強調。「ECBは米連邦準備理事会(FRB)に依存しているのではなく、データに依存している」と語った。

ECBの討議内容に詳しい複数の関係筋は、今回の理事会で米国の動向に関する議論が審議の重要な部分を占めたと言及。6月以降の動きについて、FRBの金利の道筋がより明確になるまでECBは金利を据え置く可能性があると述べた。

3月のユーロ圏消費者物価指数(HICP)上昇率(速報値)は前年比2.4%と、ロイター調査の横ばい予想に反して前月の2.6%から鈍化した。    

市場はECBが今年3回、計75ベーシスポイント(bp)の利下げをする可能性を織り込んでいる。

これに対し米国の3月のCPIは前年同月比3.5%上昇し、前月の3.2%上昇から加速。昨年9月以来の大幅な伸びとなり、FRBが9月まで利下げを見送るという観測が強まった。

市場関係者は、FRBがインフレ対応を継続するために金融緩和を遅らせた場合、事態が複雑化する可能性があると指摘。AFSグループ(アムステルダム)のシニアアナリスト、アルネ・ペティメザス氏は「ECBはFRBを緊密に注視する。FRBが年内に利下げを開始しなければ、ECBの利下げは2回程度に限られる可能性がある」と述べた。

ロイター
Copyright (C) 2024 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

オープンAI、グーグル半導体を使用 初の非エヌビデ

ビジネス

エヌビディア関係者、過去1年に10億ドル超の株式売

ワールド

米税制・歳出法案、上院で前進 数日内に可決も

ワールド

G7、国際最低課税から米企業除外で合意 「報復税」
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本のCEO
特集:世界が尊敬する日本のCEO
2025年7月 1日号(6/24発売)

不屈のIT投資家、観光ニッポンの牽引役、アパレルの覇者......その哲学と発想と行動力で輝く日本の経営者たち

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で大爆発「沈みゆく姿」を捉えた映像が話題に
  • 2
    夜道を「ニワトリが歩いている?」近付いて撮影してみると...意外な正体に、悲しみと称賛が広がる
  • 3
    突然ワニに襲われ、水中へ...男性が突いた「ワニの急所」とは
  • 4
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 5
    仕事ができる人の話の聞き方。3位は「メモをとる」。…
  • 6
    キャサリン妃の「大人キュート」18選...ファッション…
  • 7
    ロシア人にとっての「最大の敵国」、意外な1位は? …
  • 8
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝…
  • 9
    砂浜で見かけても、絶対に触らないで! 覚えておくべ…
  • 10
    「水面付近に大群」「1匹でもパニックなのに...」カ…
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々と撤退へ
  • 3
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で大爆発「沈みゆく姿」を捉えた映像が話題に
  • 4
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 5
    定年後に「やらなくていいこと」5選──お金・人間関係…
  • 6
    夜道を「ニワトリが歩いている?」近付いて撮影して…
  • 7
    飛行機内で「最悪の行為」をしている女性客...「あり…
  • 8
    サブリナ・カーペンター、扇情的な衣装で「男性に奉…
  • 9
    突然ワニに襲われ、水中へ...男性が突いた「ワニの急…
  • 10
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 3
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    妊娠8カ月の女性を襲ったワニ...妊婦が消えた川辺の…
  • 6
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 7
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 8
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 9
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 10
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中