コラム

小沢一郎は復活するのか

2010年07月08日(木)16時53分

 参議院選挙に向けた選挙戦に何か教訓があるとすれば、それは誰もがすでに知っていること、つまり「小沢一郎を止めることはできない」という教訓だ。

 鳩山由紀夫による見事なクーデターによって民主党幹事長の座を引きずり下ろされたとはいえ、小沢は選挙期間中を通じて菅政権をおおっぴらに批判している。
 
 小沢が最も厳しく苦言を呈するのは、菅首相が消費税の増税にたびたび言及していること。そのせいで、民主党の候補者が苦戦しているという指摘はもっともだ。

 ウォールストリート・ジャーナルのオンライン版は、小沢による執行部批判は、彼が選挙後も菅政権の目の上のたんこぶになる予兆だと指摘している。だが、その予測は本当に正しいのだろうか。

■政調復活が菅政権の追い風に

 小沢の発言は、民主党内で小沢主導の反主流派がのろしを上げたサインだという見方は、確かに興味をそそられる。その見方が正しければ、参院選で民主党が過半数を獲得できなかった場合には特に、菅政権は政策決定の際に党に譲歩せざえるをえなくなる。

 だが、菅にとっては幸いなことに、政府と党幹部は一体となって菅を支えている。「脱小沢」で結束している点で、菅政権は鳩山・小沢体制よりも強力で、消費税をめぐる判断ミスも大したことはないようにみえる。

 さらに重要なことに、菅は政策調査会を復活させ、一般議員の声が内閣に届く仕組みを容認した点で、すでに党に譲歩している。仮に、政府の政策決定プロセスに党の見解を反映させる仕組みづくりに着手していなかったとしたら、政府が昨年の衆院選の際のマニフェストを反故にしているという小沢の主張にもっと注目が集まるはずだ。

 しかも、幹事長職を辞任したことで小沢の人気が高まっているという兆候はない。民主党議員が、昨年のマニフェストを一言一句変えずに守ろうとしている気配もない。

 小沢が100人以上の議員を擁する党内最大派閥の長だという点は懸念材料だが、実際に小沢が支持を当てにできる議員が何人いるかは未知数だ。

 小沢に忠誠を誓い、新政権に頑なに抵抗する議員はいるのだろうか。小沢の菅批判に同調する重鎮議員がほとんどいない状況は、注目に値する。

■小沢が党内で担うべき役割

 小沢を中心にした反主流派の動きが低調だからといって、消費税をめぐる菅政権の対応に、民主党議員が満足しているわけではない。消費税アップに関する政府の姿勢を有権者に選挙前に伝えて審判を仰ぎたいという思惑は理解できるが、そのせいで党内で十分な議論をする時間がないまま、案を公表する事態に追い込まれた可能性が高い。

 その結果、政府は当初の構想を後退させざるをえず、皮肉なことに、菅政権と民主党は一段と厳しい立場に追い込まれた。

 だが、政権に対する民主党議員の不満が、そのまま小沢への支持に結びつくわけではない。小沢の一連の言動は、反主流派が反撃に出る合図とは程遠い。むしろ、小沢の新たな役割──党内の支配権争いよりも党が正しい道を進むことを優先させる、党内部の批判勢力という役割──の表れかもしれない。

 小沢がその役割を受け入れるなら、菅政権も反対はしないだろう。

[日本時間2010年7月8日4時35分更新]

プロフィール

トバイアス・ハリス

日本政治・東アジア研究者。06年〜07年まで民主党の浅尾慶一郎参院議員の私設秘書を務め、現在マサチューセッツ工科大学博士課程。日本政治や日米関係を中心に、ブログObserving Japanを執筆。ウォールストリート・ジャーナル紙(アジア版)やファー・イースタン・エコノミック・レビュー誌にも寄稿する気鋭の日本政治ウォッチャー。

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